課題解決へ官民連携 児童福祉 在り方見直す 都内でシンポ、6分科会が議論 希望って何ですか 第3章特集ー読者とともに考えるー

宇都宮市の子どもの居場所「月の家」の取り組みを紹介する星さん

 日本の子ども福祉を見つめ直すシンポジウム「子どもWEEKEND」(日本財団主催)が2月16日、都内で開かれた。「子どもの居場所」の必要性や、昨年12月に策定された「こども大綱」の意義などについて六つの分科会が開かれ、国や地方自治体、民間団体などがそれぞれの立場から子どもを取り巻く課題などについて議論した。その中から「居場所での包括支援」「社会的養護と居場所の連携」「ふるさと納税によるNPO支援」をテーマにした三つの分科会について紹介する。

 

■社会的養護 支援の形 可能性探る

 子育てで困難を抱える世帯がこれまで以上に顕在化している状況から、4月に施行される改正児童福祉法は、自治体による家庭や養育環境支援の強化を明記した。里親と子どもが家族のように暮らすファミリーホームや食事や学習などの生活支援を行う子どもの居場所の運営者らが、子ども、家庭支援における社会的養護と居場所の連携の可能性を探った。

 パネルディスカッションに先立ち、早稲田大人間科学学術院の上鹿渡和宏(かみかどかずひろ)教授が社会的養護の現状について基調講演した。

 2021年度、全国の児童相談所が児童虐待相談として対応した件数は約21万件に上り、このうち約2%が親子分離に至った。上鹿渡教授は「親子分離となる前に、子どものニーズに合わせた家庭支援が必要」と強調した。

 改正児童福祉法の施行に伴い、4月から新設、拡充される国の施策についても言及。児童育成支援拠点事業や、子ども自らの希望でショートステイを利用できるようになる「子育て短期支援事業」などについて説明した。

 その後、宇都宮市の子どもの居場所「月の家」の責任者星美帆(ほしみほ)さんら5人のパネリストが、それぞれの団体の活動内容を紹介した。

 14年7月に開所した月の家は現在、約20人の小中高校生が利用している。放課後になるとスタッフが小中学生を迎えに行き、食事や入浴などの支援をし、自宅まで送り届けている。

 利用は1人原則週2回。1日の利用者数は10人未満にするよう調整しているという。星さんは「何かあったときにSOSを出せる関係となるために、利用人数を少なくして、大人と子どもの関係づくりを大切にしている」と話した。

 上鹿渡教授は「居場所は子ども支援から入っているが、送迎で親とも顔を合わせることで関係ができ、親や家庭支援へつなげられる可能性がある」と利点を語った。また社会的養護の観点から「親子分離された後、再び家庭に戻る子どもが居場所を利用できれば、家庭での様子などを見られる」と連携について期待を寄せた。

■包括支援 困り事に合わせ援助

 貧困などで養育環境に課題を抱える家庭の子どもたちを支える「子どもの居場所」を増やそうと、国は新年度、居場所の運営費用などを補助する「児童育成支援拠点事業」を始める。分科会では、トークセッションを実施しながら、こども家庭庁の担当者が事業について説明した。

 トークセッションにはこども家庭庁成育局成育環境課の山口正行(やまぐちまさゆき)課長、自治体、支援団体の関係者4人が登壇した。

 児童育成支援拠点事業は、子どもに安心安全な居場所を提供し、生活習慣形成のサポートや学習支援、食事、課外活動の提供、学校や医療機関との連携、保護者の相談対応など包括的な支援を行う。実施主体は市区町村で、補助率は国と県、市区町村の3分の1ずつ。開所日数は週3日以上。専門職の配置や送迎の有無などにも応じて補助の加算がある。

 山口課長は「居場所をつくることによって、そこに来た子どものニーズが分かるようになる」と市区町村が居場所をつくる利点を挙げた。市区町村には子育て支援のメニューがたくさんあるため、子どもの困り事に応じて居場所以外のサービスを紹介したり、支援事業の実施を検討したりすることもできると訴えた。

 一方、事業実施にこぎ着けるために支援者側ができる対応について問われると、「市区町村の担当職員がやりたいと思っていても、予算を得るために(事業の意味を)財政課へ説明しないといけない。そのために、支援者である皆さんは(居場所の効果などの)材料を提供してもらいたい」と促した。

 最後に、「居場所づくりの考え方を国として示して取り組んでいるので、ぜひ積極的に進めていただきたい」と呼びかけた。

■ふるさと納税 「GCF」活動原資に

 年間1兆円規模に増えているふるさと納税をNPOによる地域課題解決に役立てる動きがある。仲介事業者や先進的な取り組みをしている自治体などの関係者が登壇し、有効な活用方法を共有した。

 ふるさと納税の仕組みを使ったガバメントクラウドファンディング(GCF)がテーマとなった。通常のふるさと納税と違い、「お礼の品よりも使い道への共感から寄付を募る」取り組みが紹介された。

 先進事例として挙げられた佐賀県の取り組みは、同県が地域課題解決のために活動するNPO法人などの指定団体と連携し、寄付の使途を明確にしたGCFのプロジェクトを立ち上げてふるさと納税としてお金を集め、その85%を同県がそれぞれの団体に活動資金として寄付するというもの。

 2022年度にはこの仕組みを活用し、約7億2100万円を集めた。

 同県県民協働課の川崎(かわさき)まり子(こ)課長は「ふるさと納税が活動の原資になっている団体もある。他の自治体にも広まるといい」とした。

社会的養護と子どもの居場所の連携について議論した分科会
「居場所での包括支援」がテーマとなった分科会

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