ブタの腎臓をヒトに移植、脳死除き世界初 米病院

Nancy Lapid

[21日 ロイター] - 米マサチューセッツ総合病院の医師らは21日、重い腎臓病を患う62歳男性に、遺伝子操作したブタの腎臓を移植したと発表した。脳死状態のヒトへの移植を除けば世界初の事例。病院は「より入手しやすい臓器を患者に提供するための探求が、大きな節目を迎えた」との声明を出した。

16日に4時間の手術を受けた患者のリチャード・スレイマンさんは順調に回復しており、近く退院する見通し。

スレイマンさんは7年にわたる透析治療の後、2018年に同じ病院でヒトの腎臓の移植を受けた。しかし5年後にこの腎臓は機能しなくなり、透析を再開していた。

ブタの腎臓は米eGenesis(イージェネシス)社が供給。人体に害をもたらす遺伝子を除去し、ヒトの特定の遺伝子を加える遺伝子操作をブタに施していた。人体を傷付ける可能性のあるブタのウイルスを不活性化する処置も行った。

ヒトの免疫システムによる拒絶反応を抑えるため、実験的な抗体も使用した。

同社は先に、同様の操作を加えたブタの腎臓を複数のサルに移植することに成功。昨年10月に研究者らが科学雑誌で報告したところでは、サルはその後平均176日生存し、2年以上生存した例もあった。

ニューヨーク大学ランゴーン移植研究所のディレクター、ロバート・モンゴメリー氏は電子メールで、今回の手術によって「異種移植」が進展したと指摘。「腎不全に苦しむ何十万人もの人々にとって、(異種移植は)代替的な臓器供給源へと近づいた」と評価した。

メリーランド大学は22年1月に、重い心臓病を患う57歳男性に遺伝子操作したブタの心臓を移植したが、男性は2カ月後に死亡した。

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