ドローン社会実装を“リード”する機体&システムが一挙終結! 「愛知モデル2030」成果発表会も同時開催[DRONE EXPO 2024 in Aichi]

愛知県とPRODRONEがタッグを組み、あいちイノベーションプロジェクト「空と道がつながる愛知モデル2030」がスタートしてもうすぐ1年が経つ。2024年3月18日、愛知県豊田市にある藤岡へリポートで、「DRONE EXPO 2024 in Aichi」が開催された。当日は、社会で活躍中のドローンたちが華麗なフライトを披露したほか、同プロジェクト参画企業である名古屋鉄道、SkyDrive、テララボらも展示やプレゼンに駆けつけ、ドローン社会実装が着実に進みつつあることを印象付けた。

デモンストレーション~社会で活躍するドローンたち~

開会宣言で勢いよく空に舞い上がったのは、競技専用機体PRODRONE PDH-02C。アクロバティックな演舞に会場は一気に沸いた。

パイロットは、世界最高峰のRCヘリコプターの競技会であるFAI/F3C 世界選手権チャンピオンの伊藤寛規選手らがつとめた

会場は豊田市内にある藤岡ヘリポートだ。豊田市とPRODRONEは「ミライ・チャレンジパートナーシップ協定」を締結しており、同社はここで実験・研究を行っているという。

オープニングで挨拶するPRODRONE代表取締役社長の戸谷俊介氏(左)と、同社取締役副社長の菅木紀代一氏(右)

空中も水中も観光できる「ドローンの遠隔操縦」

最初のデモンストレーションは、Red Dot Drone JAPANによる「ドローンの遠隔操縦」だ。実際に遠隔地にあるドローンを動かしたほか、遠隔操縦による多様な取り組みを紹介した。なかでも介護施設で暮らす高齢者の方々がドローンの遠隔操縦で観光を楽しんだ「アクセシブルツーリズム」は、ドローンの社会実装が進んでいることをしっかりと印象付けた。

東京都立川市にある高齢者施設の入居者らが、施設から約40km離れたカヌー競技場上空のドローンを遠隔操縦して競技選手を追いかけるという観光ツアーの事例
東京都内にある施設から小笠原諸島の父島にあるPRODRONE PD4-AW-AQ(通称AQUA)を遠隔操縦して、高齢者の方々が水の中の映像を楽しんだという事例
Red Dot Drone JAPANの三浦望氏が同社のさまざまな取り組みを紹介した
目の前にあるドローンを飛ばすがごとくに地球の裏側のドローンも同じような感覚で操縦できる技術を開発しているという
遠隔地にあるドローンの機体やジンバルを動かすデモンストレーションも行った

第一種型式認証申請中、物流機体を3D対応のGCSで自動航行

次に、PRODRONE PD6B-Type3が22本の500mlペットボトルを搭載し、LTE通信で自動航行する物流のデモを行った。長野県伊那市では毎日、住民の方が注文した食料や日用品を運搬しているそうで、同社はこの機体をベースに第一種型式認証を申請中だ。また、自動航行を管理するGCSは3D化も可能。ただ飛ぶだけではなくシステムとして安全性を担保していく、社会実装推進を象徴するデモだった。

飛行実績豊富なPRODRONE PD6B-Type3。現在、この機体をベースにして第一種型式認証を申請中だ
自動航行を披露する様子
GCS上で予め設定したウェイポイントを順番通りに飛行する自動航行プラン

豊田市消防本部は"緊急出動"さながらのデモを披露

2019年度にPRODRONE PD4-AW2によるドローンの本格運用を開始した豊田市消防本部は、2022年度に後継機として配備したPRODRONE PD4-XA1(通称:4X)を使って、山岳救助の現場でドローンによる声かけを行うデモを披露した。要救助者を映像で確認した後、機体の高度を若干下げて、「あなたは歩けますか? 手を振って下さい」と呼びかけた。ドローン搭載のスピーカーはすでに実際の災害現場でも活用し、有用性を確認できているという。

実は、イベント当日朝も会場から緊急出動し戻ってきてすぐデモを行った。この事実自体がまさに消防ドローンの社会実装を体現しているといえよう
ドローン隊は毎日訓練を行っているそうで、デモ時も2~3分で離陸準備を完了して速やかにフライトを開始した
リアルタイム映像で要救助者が手を振って応答するのを確認すると、「ドローンが安全な場所に誘導するので、ドローンについて歩いて下さい」と呼びかけた
ドローン着陸後も非常に手際よく撤収作業を行った

ビジュアル・システムズ、ドローン測量の自動航行支援ツール

ビジュアル・システムズは、絶賛開発中のドローン測量における自動航行支援ツールを紹介した。レーザー照射角度やラップ率の設定はもちろん、KML形式で出力してGoogle Earth上で飛行プランを精査するなど、自動航行をより容易にする機能が盛り込まれている。

新たなソフトウェアの説明をするビジュアル・システムズ代表取締役の山村茂正氏
現在、PRODRONE PD4B-Mへの実装を目指して最終調整中だという

世界初、100%バイオエタノール燃料の無人ヘリコプターのデモフライト

本イベントもう1つの目玉が、100%バイオエタノール燃料による無人ヘリコプターの世界初となるデモフライトだ。筆者が取材した午前中は、おそらく急激な外気温の低下からバイオ燃料の粘度が変化したことで残念ながら飛ばなかったが、午後は高度3mでホバリングする姿をお披露目したという。脱炭素社会に向けて、非常に有意義な試みである。

100%バイオエタノール燃料の無人ヘリコプター PRODRONE PDH-GS120
「100%バイオエタノール燃料は植物由来でお酒と同じ」と、戸谷氏と菅木氏がレモンを入れて試飲して見せた
外気温が上がった午後には高度3mでホバリングする姿を披露。世界初※の100%バイオエタノール燃料による無人ヘリコプターの飛行成功となった。※PRODRONE調べ

ドローン社会実装をリードする機体がずらり並ぶ展示

展示会場にもドローン社会実装をリードする機体が数多く並んでいた。PRODRONE「水空合体ドローン」最新機種が特に注目を集めていたほか、能登半島地震で重量物搬送ドローンとして活躍したSkyDriveのSkyLiftや、空も飛び道も走るというコンセプトで開発予定のSORA-MICHIも展示された。

PRODRONE新製品「水空合体ドローン」最新機種も初お披露目

最新機種ではこれまで市販製品を用いていた"水中ドローン"もPRODRONE独自開発の機体が採用されており、GCSとの統合まで一気に進むのではないかと期待が膨らんだ
PRODRONEが独自開発した水中ドローン
空中ドローンにはGPSが装備され位置情報を取得できる。水中ドローンは音響測位装置を用いて空中ドローンとの相対距離を計測することで水中の位置を可視化する

空、陸、海と、地球上あらゆるフィールドで活躍するドローンたち

Red Dot Drone JAPANが「アクセシブルツーリズム」で活用していたPRODRONE PD4-AW-AQ(通称:AQUA)
能登半島地震で重量物輸送ドローンとして活躍したSkyDriveのSkyLift
将来的に重量50kgの距離50km輸送するコンセプトで開発予定のSORA-MICHI
豊田市消防本部の使用機体
PRODRONE PD4B-Mは、量産が始まった

あいちモビリティイノベーションプロジェクト「空と道がつながる愛知モデル2030」成果発表会

愛知県ではPRODRONEが提案した、あいちイノベーションプロジェクト「空と道がつながる愛知モデル2030」が立ち上がり、ドローン、空飛ぶクルマや、自動運転車が同時に自動管制でシームレスかつ安全に制御され、人や物の移動に境界がなくなるという壮大な構想に向けた取り組みが始まっている。当日は成果発表会も同時開催され、愛知県、PRODRONE、名古屋鉄道、テララボが登壇した。

愛知県は、「令和の殖産興業」として、次世代モビリティ産業の集積と、愛知県の強みである自動車や航空機の既存産業の融合を図り、新たな基幹産業の発展を目指すことを改めて発表した。具体的には、需要の創出と供給力の強化という好循環を図るという。

PRODRONEは、同社が目指すドローン開発における3つのユースケースを説明した。平時はデジタル田園都市国家構想に沿って、災害時においては国土強靱化計画、防衛は国家安全保障戦略に則って進めるという。また、空と道がつながる愛知の実現に向けた展望としては、運搬重量50kg、飛行距離50kmの空飛ぶ軽トラの開発を目指すと話した。

名古屋鉄道は、「空と道がつながる愛知モデル2030」において、災害時やイベントで活用される医療コンテナとドローン輸送を連携させる実証や、河川上空飛行による巡視代替可能性の検証などの実証実験を実施したことについて、背景や現状の課題、実証の実施体制や取り組み内容、実証後の手応えなどを詳しく報告し、今後のビジネスモデル確立に向けても意欲を示した。

テララボは、災害時の広域情報取得に向けた取り組みにおいて、有人固定翼機を用いて地上分解能20cmのオルソ画像を作成した実証や、自社保有の無人機を用いて地上分解能5cmのオルソ画像を作成した実証について報告した。4km四方の範囲であれば、10~15分で撮影、1~2時間でオルソ画像を作成して、 災害対策本部にデータを連携し、道路の寸断状況や家屋の損壊状況を把握するのに役立てられるとの見解を示した。

能登半島地震の緊急出動でドローンを活用した"リアルボイス"

鵜飼氏(左)と大谷氏(右)

プレゼンテーションの締めくくりには、能登半島地震で輪島市へ緊急出動してドローンを活用した豊田市消防本部の大谷氏と、同じく輪島市でSkyDriveのSkyLiftを運用したというLe Ciel DRONEの鵜飼氏が、現地で感じたリアルボイスを届けた。

大谷氏:元旦の発災後すぐに出動したが、現地には20時間以上経過して到着した。輪島市内の被害状況把握や、土砂災害やトンネル寸断の先の状況把握のためにドローンを目視内で飛行させた。自衛隊のヘリコプターが飛び交う中では我々も飛ばしづらい状況だったので、ドローンが役立つ機材であることがもっと広まるといいと思う。また天候にも左右されたため、機体がもっと雨風に強くなることを期待している。

鵜飼氏:発災から1週間後の1月9日に輪島市に入り、SkyDriveのSkyLiftを目視内で運用してガソリン、軽油、燈油といった重量10~20kgの重量物を搬送した。もっと早く民間企業も支援に入ってドローンを活用した救援活動を行えたのではないかという思いや、バッテリーや通信は課題だという気づきがあったが、一方で大規模災害におけるドローン活用の可能性も大いに感じた。

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