1月末、島根県大田市で将棋の王将戦7番勝負第3局が行われ、藤井聡太王将と菅井竜也八段の熱い戦いに地元も大いに盛り上がりました。
頭を使い、難しそうなイメージのある将棋ですが、実は「誰とでも仲良くなれる」魔法のツールでもあるんです。
子どももハマる将棋の魅力とは?
1月、大田市の国民宿舎さんべ荘で行われた王将戦7番勝負第3局。
対局の初手が見学できる1泊80万円の特別宿泊プランや、対局中の勝負めしやおやつにも注目が集まるなど、山陰の地で藤井フィーバーが巻き起こりました。
こうしたなか、鳥取県米子市内の小学校では、休み時間に将棋を楽しむ子どもたちの姿がありました。
対局相手はというと…
なんと校長先生です!
就将小学校校長の三木校長は、大の将棋好き。
将棋歴40年の大ベテランで、この学校に着任した時には児童に向けてこんな宣戦布告をしたといいます。
就将小学校 三木徹校長
「校長先生は将棋が強いから、挑戦しに来てください。誰にも負けませんよって話をしたんです。そしたら、たくさんの子が挑戦をしに来てくれたっていうところから、休み時間の対局が始まりました」
そのうちの一人が吉野真優理(まゆり)ちゃん、小学4年生です。
2月、小学生将棋名人戦の鳥取県大会で優勝し、3月に行われる西日本大会の代表に選ばれました。
女子児童が鳥取県代表になるのは初めてだといいます。
友達が将棋をやっているのを見て、2年生の終わり頃から将棋を始めたという真優理ちゃん。
小学生将棋名人戦鳥取県大会で優勝 吉野真優理さん
「将棋の好きなところは一対一でやるからどんな人とでも仲良くなれるところです。」
しかし、勝負は真剣です。
就将小学校 三木徹校長
「強いですよ。だって私アマチュア4段なので。」
校長先生も手加減はしません。
就将小学校 三木徹校長
「板を挟むと校長先生ではなくて、もう勝負師なので…あ、しまった。しゃべってたら失敗した!」
年齢を問わず、「将棋仲間」として対局を楽しむ姿が見られました。
躍進を続ける藤井八冠の存在もあり、将棋人気が高まっている…と思いきや。
その盛り上がりは実際の競技人口にはあまり反映されていないという現状もありました。
日本生産性本部のレジャー白書によると、2022年の将棋参加人口は460万人。
前の年から40万人減少しています。
それでも…
就将小学校 三木徹校長
「将棋っていうのは非常に子どもの力を伸ばすし引き出すものだと思っています」
将棋が子どもの力を引き出すとはいったいどういうことなのか?
米子市内の将棋教室で子どもたちの
指導に当たっている加藤先生に聞いてみました。
日本将棋連盟 棋道指導員 加藤信之 さん
「相当やっぱり頭を使う。覚えるよりもやっぱり自分で極限まで考えるということが大事になってきます」
自分の頭を使ってしっかりと考える力や集中力が身についたり、将棋を通して年齢や性別の壁を越えた交流が生まれたりと、様々な良い刺激があるといいます。
将棋教室に通う子どもの保護者
「子どもたちの中ですごくみんなが和気あいあいといろんなことを考えながら相談したり、検討したりしながらやっていて、そのなかで色んな仲間ができるっていうのが嬉しいですね」
場所は変わって、就将公民館。
初心者から中級者までを対象に開催している将棋クラブの活動が行われていました。そこには、楽しそうに将棋に取り組む大勢の子どもの姿がありました。
ここで指導をしているのは、なんと真優理ちゃんのお父さん。
実は、吉野家は親子で将棋に取り組む将棋一家なんです。
真優理ちゃんの父・吉野政司さん
「裾野が広くないとやっぱり頂上は高くならないので、裾野を広げるっていう活動はすごく大事だと思っています」
子どもたちが気軽に将棋を楽しめる場を作りたいと、去年6月にクラブを立ち上げました。クラブの最年少は、なんと5歳!
小中学生のお兄さんお姉さんに交じって、一生懸命将棋を指しています。
クラブに参加している子(5)
「さすところがたのしい!」
クラブに参加している子(14)
「年齢的には僕が一番上なんですけど、負けることも多いので年齢にこだわらない競技だなと。やってて楽しいです」
ルールを覚えれば誰とでも楽しむことができる将棋。
子どもたちの間でも少しずつ、その輪が広がりつつあるようです。
そして、3月、山形県天童市で開催される西日本大会に出場する真優理ちゃんは…(※東日本大会と同時開催)
小学生将棋名人戦鳥取県大会で優勝 吉野真優理さん
「強い人がたくさんいるから、一勝することを目標にしています!」
まずは一勝。親子二人三脚で大会での勝利を目指します。