障害があっても働いて輝く「成長しているなってすごく実感できる」 変わる“障害者雇用” 4月から法定雇用率引き上げも…課題と現状は?

2024年問題などが深刻な社会問題となる中、人手不足解消の一手として期待されているのが、障害のある人の労働力です。課題もあるなか、働く障害者と向き合う企業の姿、転換期を迎えている障害者雇用の今を取材しました。

「きょう楽しみ過ぎてアラームかけ忘れて6時半に起きた」
「はや!え、すご!」

松江市内のカフェ。友人とブランチを楽しんでいるのは、藤村光さん、22歳です。

光さんは、体幹や手足の筋力低下など体の自由が利かなくなる進行性の国指定難病「SMA=脊髄性筋萎縮症」という病気を抱えています。

食事やスマホ操作など手を使った簡単な運動はできますが、歩くことはできないため、車いすで生活。また、呼吸筋が弱く、生活のほとんどを人工呼吸器を付けて過ごしています。

そんな光さん、松江市の会社で正社員として働く社会人1年生です。

藤村光さん
「慣れましたねだいぶ。すごく楽しいですし、成長しているなってすごく実感できるので」

光さんが働く「トレンド」は、地元企業のポスターやチラシのデザイン・印刷などを手がける会社。光さんは、3Dデザインやクライアント対応などを担当していて、専属のヘルパーが日中の業務、そして通勤をサポートしています。

トレンド 徳田裕成社長
「最初に出会った時に、インターンシップに行かせてほしいって言われて『即OK』って言って。一緒に働く中で彼女の姿勢、周りに及ぼす影響とか、彼女が考える将来の地域に対する価値観が、トレンドの考え方とぴったりだなと思って、ぜひ仲間になってほしいなって思っていました。」

実は、島根県は障害者雇用の先進県。従業員に占める障害者の割合は全国平均を大きく上回っていて、達成企業の割合ではなんと3年連続で全国1位を記録しています。

「法定雇用率」は今後、段階的に引き上げられることになっていますが、全国的にみると今も3割の企業が障害者雇用ゼロという実情も。

そんな中、今、ある制度に注目が集まっています。

境港市にある「サンライズさんこう」。廃棄物処理事業などを展開する「三光」の子会社として2019年に設立された会社です。

サンライズさんこう 安達賢統轄部長
「三光株式会社の特例子会社という認定をいただいておりまして、障害のある方が働きやすいですよという認定を受けています」

「特例子会社」とは、障害のある人の雇用促進と雇用の安定化を図るために設立された会社のこと。特例子会社として認定を受けると、その親会社は、特例子会社で雇用された障害者を法定雇用率に算定することができるのです。

サンライズさんこうでは、現在、障害を抱える10人の人が働いています。

サンライズさんこう従業員
「他の会社ではないと思うんですけど、面談して相談に乗ってくださったり、色んなことをサポートしてくれます」

そう話すのは、統合失調症を抱える男性。サンライズさんこうで働き始めて5年目です。この会社では定期的な面談のほかに通院休暇なども設けられていて、障害者には働きやすい環境が整っているといいます。

サンライズさんこう 安達賢統轄部長
「今、会社の半分の方は精神障害者の方です。こうした精神障害の方や発達障害の方は非常に離職が多いというアンケートもあるので、そういう方でも長く働ける会社を目指しています」

企業個々の取り組みが加速する一方で…。

トレンド 徳田裕成社長
「ヘルパーさんがついて仕事をするってケースが結構まれだと思うので、その調整に苦労しました」

重度の肢体不自由などの障害がある人が在宅で生活を続けられるようにサポートする、国の「重度訪問介護」。光さんのように重度の障害を抱える人が日常生活を送るのに欠かせないサービスですが、就労・通勤の支援は認められていません。
そのため、就労時の介助費用については、「トレンド」が一部負担しているといいます。

こうした制度上の課題が障害者雇用のネックになっているといいますが、企業としては、まず、障害のある人ひとりひとりを見つめてほしいと話します。

トレンド 徳田裕成社長
「制度云々もそうなんですけど、それよりももっと知ることじゃないかなと思うんですよね。養護学校さんが周りにありますけど、企業としてももう少し接点をもって、どういう素晴らしい子がいるのかっていうのを知ることからかなって、僕は思います」

サンライズさんこう 安達賢統轄部長
「障害者だって身構える必要はなくて、1人の人なので、どんな人でも癖だったり、上手くできることと得意なこととか苦手なことは絶対にあるので、その本人がどういう方かっていうのは障害を除いてまずどういう方かなって話してみて、そういうのを知っていくことが大事かなと思います」

そして、その先で、障害のある人自身にも大きな変化が生まれています。

藤村光さん
「県外に遊びに行ったりとかも、就職してからするようになったので、海外とかもね、行ってみたいなと思ったりしています」
友人
「行動力がより増した。え、次どこ行くの?みたいな。どこにでもいけそう。」
藤村光さん
「そう、どこにでも行ける!本当に」

働いて、輝く。
障害のあるなしに関わらず、その可能性がますます広がっていきそうです。

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