球界のスーパースターが巻き込まれた賭博騒動が意外なところで注目を浴びている。
現地3月22日、MLBはロサンゼルス・ドジャースから解雇された大谷翔平の元通訳である水原一平氏に対して、違法賭博の疑いで調査を開始したとの声明を発表した。「両者の疑惑を報道で知って以降、情報収集に努めてきた」と明かし、今後はMLB調査局(DOI)がこの件に関して正式な捜査を進める。
事の発端は韓国・ソウルでサンディエゴ・パドレスとの開幕シリーズの期間中に米紙『Los Angels Times』が報じたスクープだった。ロサンゼルス・エンジェルス時代から大谷の通訳だけでなく、彼のキャッチボール相手や身の周りのサポートをし続けた水原氏が違法な賭博行為に及んだ容疑が浮かび上がり、ドジャース球団が即刻解雇を決定した。
また大谷の代理人弁護士が所属するバーク・ブレトラー法律事務所の広報担当者は「イッペイ・ミズハラが大規模な窃盗に及んだ」と告発。大谷の口座から違法ブックメーカーへ資金が流出している事態を把握し、被害額は少なくとも450万ドル(約6億8000万円)にのぼると言われている。
しかも米スポーツ専門局『ESPN』によると、当初の水原氏は「大谷に借金を肩代わりしてもらった」という発言をしていたが、翌日になってその供述を撤回。同局が「噓をついたのか?」と問いただすと、「そうだ」と虚偽の発言であったことを認めた。
世間を騒然とさせた一大スキャンダルの余波は、まだ止まらない。23日には水原氏が卒業したとされる大学について疑念を抱いた米大手ネットワーク局『NBC』が学校を取材したところ、大学広報が「在籍した記録がない」という衝撃の返答をし、同氏の”学歴詐称問題”が浮上。次々と新たな疑惑が噴出した。 水原氏の違法賭博疑惑を巡るニュースは、野球が盛んではない英国のメディアも注視している。
1821年創刊の老舗大衆紙『The Guardian』は「ショウヘイ・オオタニの通訳がスキャンダル! スポーツ賭博の汚い裏側が明らかに」と銘打った見出しを打ち、「野球界の最大スターが賭博騒動に巻き込まれている」と異例のページ数を割いて、一連の騒動について詳細に記述している。
同メディアはまず、「これはメジャーリーグにとって最悪の悪夢だ」と書き出し、「リーグの顔であり、真の国際的スターであり、このオフシーズンには7億ドル(約1015億円)の契約で常勝軍団のドジャースに加わったショウヘイ・オオタニが、違法なスポーツ賭博にまつわる疑惑に巻き込まれている」と紹介。英国内でも大谷の良き相棒であり、友人として認識があった水原通訳の突然の解雇を伝えている。
同紙は「ミズハラはどうやってオオタニの口座にアクセスできたのか? どうやったらブックメーカーから450万ドルの借金を作れるのか?」と疑問を呈し、「日本で最も有名な人物であり、野球ファン以外にも認知されている数少ないMLBプレーヤーのひとりであるオオタニにとって、今後どのような影響があるか計り知れない」と言及。誰も想像していなかったシーズン開幕直後のスキャンダルに同情を寄せた。
加えて、「現段階で分かっていることは、他のアメリカのプロスポーツと同様、合法的な賭博の受け入れを急いでいるMLBにとって、これは最悪の事態だということだ」と論じ、スーパースターのイメージダウンを危惧する。
さらに水原元通訳が「ギャンブル依存症だった」という事実にも触れ、「MLBは試合数が多いうえに、イニング間にアプリをクリックするのに十分な時間がある。多くの米国人にとって、賭けは毎日の儀式となっており、野球ほどドーパミンが湧き出るスポーツはない」と指摘。野球賭博の危険性に警報を鳴らした。
ドジャースを電撃解雇された後、表舞台に姿を現していない水原氏。海外も注目するほどの違法賭博騒動を起こした渦中の人物は、いまどんな胸中なのだろうか。
構成●THE DIGEST編集部