大谷翔平と水原一平氏を巡る一大騒動で慌ただしく動いた“危機管理担当広報”とは何者なのか。「新たに雇われた」「借金支払いに初めて言及」「電話取材を設定→同席」など米ESPN報道

日米のみならず、韓国や欧州でも一大センセーションを巻き起こしている。ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平と、元通訳である水原一平氏を巡る違法賭博スキャンダルの波紋が止まらない。

騒動が発覚する初期段階から、その流れを把握して最前線に立っていたのが米スポーツ専門チャンネル『ESPN』だ。なかでもティシャ・トンプソン記者は取材グループの中心人物で、現地3月22日には一連の顛末をこと細かに時系列でまとめたレポート記事を掲載した。

2000を超える英単語が綴られた長文のなかで、大谷や水原氏、ネズ・バレロ代理人、弁護団などの間を慌ただしく動き回り、キーマンのごとく振る舞った人物がいた。名前は明かされていないが、ESPNは「大谷のために新たに雇われた危機管理担当広報」と紹介している。

トンプソン記者の記事内における危機管理担当広報の言動をまとめてみた。

・ESPNが事実確認でバレロ代理人に接触。数時間後、代わって担当広報が対応。
・何度か連絡を取り合い、情報収集中だと回答する。
・バレロ代理人が水原氏を問い詰めて、大谷が水原氏の借金を支払っていた事実を確認。その内容を担当広報がESPNに初めて伝える。
・同時に大谷の言葉だとして「はい、何度か大金を送信しました。それ(50万ドル=約7500万円)が送れる最大の金額でした」を明かす。
・ただ、大谷がバレロ代理人と水原氏経由で話したのかどうか。担当広報はその点を明確にしていない。

・ESPNが水原氏を取材したいと要請し、アレンジを約束。
・担当広報が借金は少なくとも450万ドル(約6億8000万円)に上ると明言。
・3月19日に水原氏との電話インタビューを設定。担当広報も同席する。
・翌日、ESPNに取材記事を掲載しないように要請。「一平が嘘をついていた。大谷は何も知らなかった」と発言。
・大谷と代理人たちのすべての会話は水原氏を介していたと強調。

・ESPNに対して、弁護団が水原氏の窃盗を告発する予定だと伝える。
・水原氏の解雇決定後、担当広報は「通訳である一平が大谷への情報をコントロールしており、大谷は何が起こっているかを理解していなかった」と説明。大谷はMLB開幕戦の試合後、ロッカールームで別の通訳を介して初めてその事実を聞き、「彼は何か調査があるなんて知らなかった。試合後に口座からお金が消えていることを知ったんだ」と明かす。

トンプソン記者が「ジグザグの48時間」と表現したドタバタ劇にあって、担当広報が重要な役割を果たしていたことが分かる。代理人や弁護団による指示で動いていたのかどうかは判然とせず、どのタイミングで着任したのかなど素性にもいっさい触れられていない。

ESPNの記事内容が広く共有されると、X(旧ツイッター)上では水原氏の発言に付随して、担当広報に対するコメントも数多く上がった。「危機管理なさすぎる」「やっぱり代理人の指示で動いていたのかなぁ。謎だ」「大谷本人に事実確認してないっぽいね」「最初は借金肩代わりを美談だとでも思ったのだろうか」「同席していた割にはなにも制御できていない」「なんだ、一平さんが勝手にインタビューに応じたわけじゃなかったのか」「初動対応のミスとしか思えない」といった意見だ。

現地金曜日になってMLBは大谷と水原氏の双方に対し、具体的な調査に乗り出すとの声明を発表した。ドジャースと大谷にとって、公式戦再開まであと4日。それまでになにかしらの裁定が下されるのだろうか。

構成●THE DIGEST編集部

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