【JFAアカデミー福島完全帰還】(下) 地元の支援体制構築課題

当時を振り返りながら、サポートファミリーの復活を願う小山さん夫妻

 13年ぶりに福島県内に完全帰還した日本サッカー協会(JFA)の選手養成機関「JFAアカデミー福島」が、さらに発展するには地元の支援が欠かせない。拠点のある双葉郡は東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興の途上にある。地域の活力が十分に回復していない中、支える体制をどう構築するのかが課題となる。

 原発事故以前、広野、楢葉、富岡3町の計約60世帯が「サポートファミリー」として、全国から集まったアカデミー生を支援してきた。田植えやバーベキューなどの体験・交流行事を企画。親元を離れて寮生活を送る少年少女を温かく迎え入れ、練習に集中できる環境づくりに貢献してきた。

 主に女子を受け入れてきた楢葉町では原発事故に伴い、サポートファミリー制度を休止している。町内山田岡の民宿「羽黒荘」を営んでいる小山重勝さん(72)と咲子さん(70)夫妻はサポートファミリーだった。女子寮完成前の2006(平成18)年4月から1年間、県内外出身の1期生の女子約20人を民宿に住まわせ、生活の面倒を見た。

 「わが子同然のように接していた」と振り返る。転居したばかりのころ、慣れない土地での生活に不安を感じている選手が見受けられたという。「思春期の子どもたちを見守る体制が復活してほしい」と主張する。

 町はJFAなどと連携し、町内に寮があるアカデミー女子を後押しする方針を示している。サポートファミリーの“復活”を視野に入れた対応を検討する。さらに新年度から町職員らが中心となって試合を応援する計画を立てている。町全体でアカデミー生が活動しやすい雰囲気をつくる。

 松本幸英町長は「アカデミーのメンバーの姿は町が震災前の状態に戻る一つの象徴となる」とした上で「楢葉町、双葉郡で練習を積み重ねた子どもたちが将来、日本代表として活躍する日が来てほしい」と願っている。

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