冬季にイチゴ栽培、多角化と雇用安定へ ユリ生産・販売の千歳園(山形)

ユリに加え、イチゴ栽培を始めた千歳園の池野博聡社長=山形市長町

 花きのユリ生産と販売を手がける千歳園(山形市)は、事業の多角化と雇用の安定化を図るため、ハウスを増設し、冬季のイチゴ栽培を始めた。果樹王国の本県で果物の空白期間とも言える冬場の需要に応え、一年を通した収益の平準化を目指す。

 同社はハウス栽培のユリを首都圏の市場や東北地方向けに出荷するほか、市内の産直施設や自社の直売所で販売している。春から初冬にかけての時期や卒業・入学式シーズンを含め、通年出荷しているものの、需要が下がる冬の栽培品目を模索した。クリスマスなどの年末年始に引き合いのあるイチゴに着目した。

 池野博聡(ひろとし)社長(45)は「果肉が軟らかいため、新鮮なものを地場で消費するのに適していると判断した」とし、県内での流通を想定している。他の果物に比べて県内生産量が少ないこと、6次産業や観光分野との連携に広がる可能性があること、ハウス内の温度がユリよりも低く、暖房費が抑えられる点を理由に挙げる。

 同市長町にある約80アールの既存ハウスの隣地約20アールを借り、イチゴ3棟、ユリ5棟のハウスを設けた。イチゴは昨年9月に4品種を植え、年明けから収穫・出荷している。10アール当たり5トンの収穫量が平均的とされているという。池野社長は「今シーズンはまだ及ばないが、栽培に適した品種を吟味し、引き合いが多い12月中の収穫を目指したい」と話す。日本政策金融公庫山形支店と山形銀行が連携して支援した。

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