ポルシェの新車20台はどこへ行く? 「コストのかかる」シンガポールにこだわる理由

クラブハウス内に展示されたポルシェ(撮影/谷口愛純)

◇欧州ツアー◇ポルシェ シンガポールクラシック◇ラグーナ・ナショナルゴルフリゾートC(シンガポール)◇7420yd(パー72)

2回目の開催となった「シンガポールクラシック」に、新しくポルシェのタイトルがついた。昨年まではおひざ元のドイツ(ハンブルク)での「ヨーロピアンオープン」でスポンサーを務めてきたが、今年から東南アジアの金融センターにシフトチェンジ。欧州の高級カーブランドは今、日本を含むアジアのゴルフファンへのアプローチに力を入れている。

「ハンブルクに比べれば、車の輸送費などのコストは多少かかるが、それだけの価値はある」と、同社の担当者マーカス・ロスメル氏は話す。17番(パー3)のホールインワン賞として、2023年冬に発売されたばかりの「パナメーラ eターボハイブリッド」を2台用意。17番ティに実物が1台展示されているほか、コース内の展示用として、同社の代表的なモデル「タイカン」などが海を渡ってやって来た。

20台用意されたポルシェのシャトル(提供:Porsche Singapore)

選手の送迎シャトルとして用意された20台のポルシェは、同社のシンガポールの拠点が所有。全て新車で、大会が終われば車体に張られたステッカーをはがし、車検やメンテナンスを経てイベント展示用として販売される。

同社はアジア市場の開拓を重視しており、“exclusive(高級)”スポーツと捉えるゴルフのファンが潜在顧客とも重なり合うと考えている。ロスメル氏は「ゴルフは我々の顧客が関心を持つ重要なスポーツ。国際的なアプローチをしていきたい」と強調する。

大会を通じて、各日320人の顧客がギャラリーとして訪れたと見込む。日本のほか台湾、中国、韓国からのアクセスが良く、様々な文化が集まるシンガポールはアジア全体へのアプローチに絶好のロケーションだ。

1月にオープンしたポルシェスタジオ(提供:Porsche Singapore)

今年1月には、シンガポール市内に「ポルシェ スタジオ」をオープン。従来の“車販売店”ではなく、“未来の顧客”につなげるため、カフェや会議室、ドライビングゲームやアパレル用品、ゴルフグッズの販売スペースを併設する。「様々な人が集い、新たなつながりを作る場所を提供したい」というコンセプトを持っている。

シンガポールクラシックとの提携年数は契約時点で具体的に示されていないが、ポルシェ側は「長期的」なスポンサーシップを考えている。「まだ明かせないが、今後アジアに向けての新プランもある。ハンブルクも最初からうまくいった訳ではない。時間をかけてやっていきたい」という。(シンガポール・ラグーナゴルフグリーン/谷口愛純)

ゴルフ用品も展示されている(提供:Porsche Singapore)
ゲームもできる(提供:Porsche Singapore)

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