恋愛経験と正直さと二股について。ある女性の失敗談

「異性と付き合ったことがない」「好きな人がいたことがない」など、恋愛の経験があまりない人を見ると純粋さを想像する人は多いと思います。

誰かのことを深く好きになり良好な関係を築きたいと思うのが恋愛ですが、他人の存在を自分の内側にしっかりと留めたことのない人のなかには「自信のなさ」が理由で恋愛から遠ざかっていることも。

人と関わる状況に心が怯みがちな人ほど、実は二股なども「できてしまう」場合があります。

「恋愛慣れしていない人」はどんな感覚や価値観を持っているのでしょうか。

「恋愛の経験が少ない」のは悪いことではない

誤解を避けるために最初に書くと、恋愛の経験が少ないことは、悪いとは決していえません。

恋愛は「誰もがするべきもの」ではなく、好きになれる相手がいなかったりそれより優先したいものがあったりと、生きるなかでどんな位置にあるかは人それぞれです。

20代後半や30代以降になると、交際経験ゼロのいわゆる「恋人がいない歴=年齢」の人は性格に何か問題があるのでは、と敬遠されることも確かに増えますが、それも当人が気にしなければいい話でもありますよね。

恋愛の経験が少ない人には、「誰かを好きになる気持ちがわからない」「好きになってもどうすればいいかわからない」など、他人との関わり方に悩むのが嫌で逃げてしまう場合もあります。

また、恋愛に興味はあるけれど自分に自信がないことで積極的になれないという人もいて、好意を自分の力で育てることが難しいために中途半端な接触しかできずにいつの間にか関係が終わってしまうことも。

恋愛は、ひとりでするものではなく「好きな人と一緒に」愛情を慈しんでいく姿勢が欠かせません。

それは経験によって掴んでいく感覚であって、この実感が育っていない人ほど、二股や浮気について罪悪感が薄く「できてしまう」自分に違和感を持ちません。

ある女性のケースをご紹介します。

恋愛をしているつもりだった女性

32歳のある女性は、「女子校育ちのこともあって、男の人のことがよくわからなくて」と、これまで男性とまともにお付き合いをしたことがありませんでした。

地元の女子大を卒業して社会人となってからは、会社のなかや友人と入ったサークルなどで男性と知り合う機会が一気に増えましたが、恋愛に発展するようなつながりを築けませんでした。

「いいなと思う人はいるのですが、LINEのIDを交換しても何を話せばいいかわからないし、デートも相手に合わせるばかりで楽しいと思えなくて。

男の人って、自分の言う通りにする女の子が好きですよね」

こんな感想が出るのは、同性の友人に接するような気軽さを男性に嫌がられた経験をしたから。

「食事に行くお店を『こっちがいいな』と言ったら不機嫌になる男の人もいて、理由がわからなかったです。

でも、好きだと思うから仲良くなりたいし、友達のままたまに会うようなくらいでも私はよかったですね」

自分では恋愛をしているつもりだったこの女性は、「向こうも私に気があるから連絡をくれるのだろう」と、距離感のある接し方でも受け入れていたそうです。

男性と付き合ったことがなく、告白をされた経験もなかった女性は、自分から行動しても否定されることが怖くなり、流れに任せていました。

あるとき、友人と買い物をしていると友人の男友達と出くわし、三人でお茶をしたら話が盛り上がり、「たくさん質問してくれるし、気が合いそう」と思ったこの女性は、自分からLINEで話すことを提案します。

ふたりきりでの会話もそれなりに弾み、女性は「好きかも」と恋愛感情を覚えたそうです。

その時点で、女性には上記のように週に一度は会う「好きな人」がいました。

「そのときはどちらもいいと思ったから」

片思いなら二股とは言わないかもしれませんが、女性は「ふたりの男性と同時進行で仲を深めていく」自分に違和感を持っていませんでした。

どちらとも「恋人」にはなっておらず、もちろん体の関係もなく、友達という枠で過ごしていれば、誰と過ごそうと縛られないことは確かです。

問題は、女性はこのふたりに「同じような接し方をしていた」ことで、それぞれとふたりきりのデートも断らなければLINEで何時間も会話するような状態を続けていました。

「求められるから応えていただけ」と話す女性は、「恋愛はそういうものだ」とも思っていたといいます。

約束がバッティングすることがあれば「順番に会う」ようにしていて、先にデートをする男性には「この後で人に会うから」とあらかじめ伝えることも忘れませんでした。

結局、LINEでの会話で自分以外にも親しくしている男がいるとわかった片方の男性が離れていき、女性は残ったもうひとり、友人の男友達との関係に集中するようになります。

しかし、これも「恋愛観について話しているときに、この間までほかの男の人とも会っていたと話したら『軽い』と言われてしまい」、連絡がなくなります。

このときについて、女性は

「彼には『好きです』と言いました。

でも、『俺とそいつを比べていたのだろう』と返されて、そんなつもりはなかったのですが『どうしてわざわざそれを俺に言うの?』と言われたときは、どう返事していいかわからなかったですね……」

と、正直に言ったつもりが裏目に出たことの理由が思いつかなかったそうです。

自分の何が「軽い」と思われるのか見当がつかないまま、この男性は「俺は一途な女性がいいから」と言って去っていったそうです。

「付き合っても浮気すると思われたのかもしれませんね」と言うと、女性は

「だって、そのときはどちらもいいなと思ったから。これが『軽い』ことになるのですか?」

と、驚いた様子で声を上げました。

相手の気持ちを想像することの大切さ

同時にふたりの人を好きになり、並行して関係を深めていくことが悪いとは決して言えません。

人を好きになる過程に決まった形はなく、複数の人を意識することだってありえるからです。

恋愛に慣れていなかった女性は、自分と関わる男性に積極的になれず、求められるがまま応えるようなやり方しか考えつかなかったといいます。

自分に自信がないから関係をリードするような接し方ができずに、男性たちのあり方に任せていたのですね。

一対一の交際が未経験なら、女性にとって「こんな関係の先」を想像するのは難しく、だから悪意なく自分の「同時進行」についても口にできるのだと感じました。

男性の気持ちを想像すれば、自分以外の人の存在は歓迎できないはずで「黙っておくのが正解」となりますが、女性にとっては「正直に話す」ことが優先で、それによって男性が傷つく可能性がわからないのですね。

恋愛は自分とは違う他人との深い関わりなら、相手の気持ちを考える姿勢がないとこんな失敗で好意を失います。

「比べていたわけではない」と女性は繰り返しますが、問題はそこではなく、自分の受け止められ方を考えなかった点です。

「そのときはどちらもいいと思ったから」は女性側の事情であり、相手がそれをどう思うかは決められません。

残った男性とスムーズに関係を発展させたいなら、過去になった男性の存在を持ち出すのではなくこれからのふたりについて話題にするのが賢明といえます。

今回はうまくいかなかったけれど、女性にとってはこれも大切な経験であり、相手の気持ちを想像することの重要さに気がつければいいなと思います。

「未知の世界」だからこその失敗

これまで異性と深いお付き合いをしてきた経験があり、場面によっては黙ることが「ふたりにとって」最善であると知っている人なら、こんな流れにはならないかもしれません。

恋愛慣れしていない人の場合は、一対一で向き合ってお互いの好意を育てていく状況は未知の世界であり、相手の気持ちを考えた振る舞いは難しいのが現実です。

誰もが最初はこんな失敗を経験するのかもしれず、この結果ひとつで恋愛を諦めるのではなく「次はもっと相手を大切にする」と自分の言動を変えていくことが大切です。

人を好きになること自体が奇跡なのだと筆者は考えますが、自分に向けられる気持ちは決して当たり前ではないことを実感すれば、その思いを慈しむ姿勢を持てるはず。

相手の気持ちだけでなく自分の思いを正しく受け止めるためにも、人と関わることから逃げずにいたいですね。

恋愛の経験が少ないことは、他人と深い感情を交わす機会がなかったともいえますが、どんな失敗も必ず次の恋愛の糧にできます。

一番忘れてはいけないのは、まずみずからが人を受け入れる姿勢をしっかりと持つことです。

恋愛はふたりの好意を一緒に育てるつながりなら、相手任せにするのではなく自分の力を尽くすことも、幸せなお付き合いには欠かせないといえます。

(mimot.(ミモット)/ 弘田 香)

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