春場所閉幕

 調べてみた。鹿児島県の桜島が大噴火し、対岸の大隅半島と地続きになったのはこの年の1月。3月には辰野金吾氏設計の東京駅が完成、4月には宝塚少女歌劇の第1回公演が行われ、7月には第1次世界大戦が勃発…▲「110年前」はこんなに遠い。昨日千秋楽を迎えた大相撲春場所は、新入幕の尊富士関が13勝2敗で初優勝を果たした。新入幕力士の幕内最高優勝は1914年夏場所以来の快挙▲ぐんぐんと力強く前に出る取り口で初日から11個きれいに白星を並べて優勝争いのトップを快走。だが、アクシデントが待っていた。前日の取組で負傷し、車いすで退場。そのまま病院に運ばれた▲痛む足を引きずりながら出場を決断した土俵。相手の突進をがっちり受け止めると一気に攻勢に転じて押し倒した。「記録にも、記憶にも残れるように」-24歳。頭の上にちょこんと載ったちょんまげが、始まったばかりの土俵人生を何より物語っている。拍手▲場所を締めくくる最後の三番「これより三役」のそろい踏みには、平戸市出身の平戸海関が登場。上位陣に休場者が相次いで思いがけず回ってきた大役を堂々とこなした。直後の取組も落ち着いた相撲で9勝目▲いよいよ看板力士の仲間入り-と実感させる晴れ姿。県内のファンに“春”を届けてくれた。(智)

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