垣根涼介さんに諫早市民栄誉賞 「極楽征夷大将軍」で直木賞受賞 「感慨深い」と地元で感謝

市民栄誉賞を受け取った垣根さん=諫早市金谷町、ホテルフラッグス諫早

 「極楽征夷大将軍」で第169回直木賞を受賞した長崎県諫早市出身の作家、垣根涼介さんに24日、市民栄誉賞が贈られた。市内で授与式があり、市民らが祝福する中、大久保潔重市長から賞状を受け取った垣根さんは「25年近く物書き稼業をやっている。こうして市民栄誉賞をいただき、とても感慨深い。こうして壇上に立っているのも皆さんが私の本を買って読んでいただいたから。ありがとうございました」と述べた。
 授与式は公募の市民ら約280人が観覧。市長とのトークイベント、サイン会もあった。
 「極楽征夷大将軍」は、室町幕府を開いた足利尊氏の人生を、弟直義(ただよし)と側近の高師直(こうのもろなお)の視点から描いた。大学卒業後、会社勤めを経て2000年に作家デビューし、歴史小説の世界に踏み込んで約10年。歴史小説を執筆する際、3年ほど下調べをするという垣根さんはトークイベントで、イメージが判然としなかった尊氏は「野望も野心も理念も節度もないが、衆望があった人物」だと分かり、「僕的にはツボだった。そうした新しい尊氏像を読者に提供できればと思った」と紹介した。
 高校まで過ごした諫早については「有明海の静かな海が好きだった。高校時代はわざわざ沿岸を通って家に帰っていた」と思いを語り、自身の作品に古里の風景をイメージとして使うことがあることを明かした。市長から諫早を題材にした作品の執筆を求められ、「少し時間をください」と応じる場面もあった。
 同栄誉賞の授与は、2008年の北京五輪体操男子で団体総合、個人総合と続けて銀メダルを獲得した内村航平さん、昨年の第76回カンヌ国際映画祭で男優賞を受賞した俳優、役所広司さん=いずれも諫早出身=に続き3人目。

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