選抜高校野球大会への出場が今回で7度目の健大高崎(群馬)。担当記者が印象に残っている健大の過去の試合を振り返る。(随時掲載)
第87回大会(2015年)2回戦
健大高崎3-1天理(奈良)
この年の天理は180センチ以上の打者をずらりとそろえる大型打線が武器のチームで、前年の甲子園を制した龍谷大平安(京都)と大阪桐蔭を近畿大会で破って優勝し、選抜でも優勝候補の一角に挙げられていた。そんな強豪を相手に健大が持ち味を存分に発揮して勝利した。
健大は四回に5番相馬優人の中前打で先制するも、七回に追いつかれた。そして迎えたその裏の攻撃で、鍛え上げてきた〝足攻〟が甲子園を沸かせた。
1死二、三塁の好機。三走の柴引良介は相手の一瞬の隙を見逃さなかった。7番佐藤望の内野ゴロを捕球した天理の一塁手、坂口漠弥が、ちらりと三走の柴引を見た後、顔と体を一塁側へ向けた。「ここだ」。柴引は迷わず本塁に向かってダッシュした。
走りだしてからは前しか見なかったという。「少しでも早く着きたい」と豪快にヘッドスライディング。体重88キロの主砲が足で勝ち越し点をもぎ取った。
八回にも足を使って追加点を奪った。無死一塁から俊足の宮本隆寛を代走に送り、相手投手にプレーシャーをかけると、1死後に春日優馬が左中間二塁打。一走宮本はエンドランを決めて一塁から本塁まで駆け抜け、貴重な3点目を奪った。
主戦左腕の川井智也も丁寧にコーナーを突いた投球で連打を許さず、1失点完投。女房役の捕手、柘植世那(西武)のリードも冴えた。
これぞ「機動破壊」という攻撃で近畿大会王者を撃破。健大は選抜初出場の2012年に4強入りし、夏も2014年に8強入り。そして迎えた2度目の選抜で再び8強入りを果たした。その後、準々決勝で東海大四(北海道)に惜敗したが、強豪校のイメージを強く印象付けた。