百寿者は全国平均の3倍⁉ 京丹後市に住む高齢者の〈長生き〉の秘密とは?【医学博士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

100歳以上の高齢者が人口10万人あたりに占める割合が全国平均の3倍とされている京都府の京丹後市。大腸がんも少ないという京丹後市の高齢者の元気な秘密について、長年腸内細菌を研究し続けている医学博士の内藤裕二氏が、著書『70歳からの腸活』(エクスナレッジ)より解説します。

京丹後市の高齢者には大腸がんが少ない

京丹後市の高齢者の腸内細菌を調べることになったのは、百寿者の人口10万にあたりに占める割合が全国平均の3倍とされることに興味を持ったことがきっかけでした。

しかも京丹後市の高齢者には、大腸がんが少ないのです。私は消化器内科の医師でもあるので、この情報も興味を引きました。

京丹後市は京都府の北にあります。一方、京都府の南には京都市があります。私たちが京都府のいろんなデータを比較したところ、京都府の北では大腸がんが少なく、南のほうが多いということがわかりました。

大腸がんは肥満や生活習慣、そして腸内フローラが関係しているので、京都府の北にある京丹後市が長寿研究によいのではないかと思ったわけです。

大腸がんが少ないだけではありません。サルコペニアやフレイルの高齢者もほとんどいませんし、インフルエンザに感染した人もほとんどいません。高血圧の人も少ないですし、血管年齢を調べると驚くほど若い。みんなとても元気で健康なのです。

その理由を探っていくと、食べものだけではないことがわかりました。食べものは腸活にとって一番大事な要素であるといいましたが、腸内フローラを変えるには日常的な身体活動量を上げていくことも重要です。

京丹後市の高齢者の1日はとても規則正しく、夜は暗くなったら寝て朝は早く起きるという生活です。そして朝早く起きたら、そのまま畑仕事に向かったりします。規則正しい生活に加えて、ゲートゴルフや体操などみんなで楽しめる運動も重要です。睡眠時間もしっかりとっていますし、すべての生活のリズムが腸内フローラをよい方向に導いているのです。

なおかつ京丹後市の高齢者は自分のことは自分でする、人の世話にはならないというメンタリティを持っています。畑仕事に象徴されるように、彼らは自分の食べるものは自分でつくるものだと考えています。

一方で、つくった食べものが余ったら、地域の仲間におすそわけをしたり、困った人がいたら助けるというふうに、みんなで助け合ってコミュニティ(地域共同体)を維持するという考え方を持っています。

それらがすべて腸内フローラに関係しているわけではありませんが、長寿のためには参考になることばかりです。

生活が不便なほうが腸は健康になる?

私たちは多くの高齢者を目の前にすると、介護のシステムを整えなければならない、病気になったときのために病院を建てなければならない、といったことを考えてしまいます。

でも京丹後市には少し前まで総合病院はありませんでした。それでも別にこの地域の高齢者は困ってはいなかったのです。

現代人は高齢者に対して、彼らが望んでもいないのに、余計な世話を焼きすぎているような気がします。

総合病院だけでなく、京丹後市にはつい最近までコンビニエンスストア(以下、コンビニ)もありませんでした。

現代のわれわれから見ると非常に不便な生活を強いられているように感じますが、そういう環境だったからこそ、自分のことは自分でするという生活習慣が生まれたのだと思います。

実は私たちは京丹後市の高齢者だけでなく、その子どもたちの世代や孫の世代の腸内細菌も調べています。孫の世代になると、彼らのおじいさん、おばあさんとは食事もライフスタイルもだいぶ違ってきています。孫の世代はコンビニのお弁当やファストフードも食べていると思いますが、腸内フローラも高齢者とは異なっていています。

こうしてみると、日本人の腸内フローラはだんだん悪いほうに向いているのだろうと思います。だからこそ、京丹後の高齢者から、再び日本人らしい健康的な腸内フローラを復活させる方法を学んでいきたいと思うのです。

京都府立医科大学大学院医学研究科

教授/医学博士

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