「地域おこし協力隊」退任後の定住率、栃木県は全国9位 全体7割、7市町で100%

県内の地域おこし協力隊の定住率推移

 都市部から地方へ移り住み、地域活性化に取り組む「地域おこし協力隊」制度で、2021年度までに栃木県内で活動し任期を終えた153人のうち、退任後に定住した割合が70.6%(108人)に上ることが24日までの総務省のまとめで分かった。全国平均(65.4%)を上回り、9位となった。活動の充実度や地域のサポートなどが奏功したとみられる。一層の定住促進に向け県は新年度、市町の支援や隊員同士の連携を強化する。

 協力隊は09年度に制度化され、任期は1~3年。県によると、2月現在、21市町で75人が活動する。本県の定住率は18年度の62.5%に比べ8ポイント上昇しており、近隣県の群馬や茨城と比べても高い。県地域振興課は「各地域でのサポートなどが隊員の定住につながっている」と分析する。

 市町への取材によると、3年間の任期を終えた隊員の定住率(1月末時点)は7市町が100%で、鹿沼市(定住者6人)、那須塩原市、茂木町(5人)、佐野市(4人)、栃木市(3人)、塩谷町(2人)、野木町(1人)。足利市が83%、矢板市が80%などと続く。

 鹿沼市の担当者は「募集段階で起業志望などを聞き取り、定住後のプランを立てやすい人を積極的に採用している」と定住率の高さの理由を説明する。

 茂木町では20~40代の隊員が茂木中と茂木高で開く「公営塾」の講師を務め、農業、観光ツアーの企画運営にも携わるなど地域密着の活動を続けている。

 栃木市で21年度に任期を終えた遠藤百合子(えんどうゆりこ)さん(41)は定住し、空き家を活用した事業を始めた。「築いてきた人脈を生かして起業できた」と振り返る。一方、隊員の約3割が地域を離れてしまっている現状に「不安を抱えている隊員は多く、退任後を見据えた行政の支援も必要」と指摘する。

 県は起業支援セミナーや市町担当者の研修会を定期的に実施し、隊員の孤立防止や受け入れ態勢の強化を図ってきた。24年度は新たに、市町の垣根を越えた隊員の広域ネットワーク組織を立ち上げるほか、退任後の人生設計を考えるキャリアプランセミナーも開催する予定。

 県地域振興課は「任期中の充実度をより高めるとともに、受け入れ地域とのミスマッチを防ぐ取り組みをしていきたい」としている。

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