帰ってきた“ファンタジスタ”荒木遼太郎が、攻撃のラストピースにハマるか。カギは“FC東京のキング”と“柏の点取り屋”との連係【U-23代表】

3月25日、U-23日本代表は国際親善試合でU-23ウクライナ代表と対戦する。パリ五輪のアジア最終予選を兼ねるU-23アジアカップ前最後の強化マッチだ。

4月16日に幕を開けるU-23アジア杯はインターナショナルマッチウィーク外の開催となるため、代表側に招集の拘束力がない。国内組は1クラブで3名までになる可能性が高く、海外組はクラブ次第だ。

それを見据えて、今回の活動はU-23アジア杯に招集が見込まれるメンバーで構成されており、チーム立ち上げ当初からコアメンバーだった鈴木唯人(ブレンビー)や斉藤光毅、三戸舜介(ともにスパルタ)といったサイドアタッカーが不在となっている。

ある意味、誰を招集できるのか、最後の最後まで見通せない。選手選考は一筋縄ではいかないが、今回の活動で招集された面々からすれば、アピールの大きなチャンスである。

なかでも、今季のJ1で4試合・4ゴールを記録している荒木遼太郎(FC東京)は、結果次第では十分にメンバーに滑り込めるタレントだ。

鹿島時代の2021年シーズンにJ1のベストヤングプレーヤー賞を受賞し、22年1月にはA代表候補の合宿に参加。当然のようにパリ五輪世代でも主軸として大きな期待がかけられていた。

だが、以降は怪我の影響もあって鹿島で出場機会が減少してしまう。大岩ジャパンからも遠ざかり、最後に招集されたのは22年3月のドバイカップまで遡る。

順風満帆とはいかなかったが、今季は期限付き移籍で加入したFC東京で復活。トップ下でアイデアに富んだプレーを見せ、開幕からゴールを重ねてきた。

満を持して代表に帰ってきた“ファンタジスタ”だが、チーム合流後に体調不良で練習を休んだため、22日のマリ戦(1-3)はベンチから戦況を見届けることに。だからこそ、次のウクライナ戦では“一発回答”が求められる。

久々の代表活動だが、感覚は悪くない。

「コンセプトは変わっていない。久々に来たけど、前の代表活動よりも一人ひとりが高め合って、良いトレーニングができている」

活躍が期待される荒木のポジションは、トップ下かインサイドハーフの可能性が高い。セントラルMFとして攻撃を牽引する役割を担うが、ポイントになりそうなのが、“FC東京のキング”と“柏の点取り屋”との連係だ。

ウクライナ戦の先発が見込まれる松木玖生(FC東京)は所属クラブでもコンビを組んでおり、連係面に不安はない。松木も「普段からプレーしているので、お互いの要求は分かっている」と話し、良い距離感を保ちながらボールを動かしていければ、自ずと荒木も良い状態でボールをもらえるシーンが増えるはずだ。

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そして、細谷真大(柏)とのコンビネーションも、活躍するうえで重要なカギになる。荒木と細谷が同じピッチに立つのは、先述の22年3月のドバイカップ以来。2戦目のカタール戦ではともに先発し、2人のコンビネーションで決定的なチャンスを作る場面もあった。

細谷も荒木とのコンビに好感触を得ており、狡猾な動きから荒木のパスを引き出したいと考えている。

「まず自分がはっきり動いて、それを出してもらうというのが自分の理想。ただ、自分も彼の能力を引き出したいと思ってるので、そこはコミュニケーションを取りながら頑張っていきたい」

攻撃のラストピースに荒木がハマるのか――。ウクライナ戦のポイントになるのは間違いないが、本人は自然体で構えている。

「気持ちはずっと変わっていない。海外の選手と戦う機会はあまりないので、自分がどこまでやれるのかを楽しみにしている」

気負わず、自分のプレーをするだけ。ウクライナ戦は13番を背負う荒木遼太郎の一挙手一投足から目が離せない。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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