門前思い患者に寄り添う 07年地震から17年 再び自宅全壊の瀨戸医院長

開花したカワヅザクラを眺める瀨戸さん=輪島市門前町舘

  ●「皆さんの笑顔で頑張れる」

 輪島市門前町で亡き父の診療所を4年前に復活させた瀨戸啓太郎医院長(65)=同市門前町舘=は2007年3月25日と今年元日の能登半島地震でいずれも自宅が全壊した。「まさか2度目が来るとは」。失意の中、ふるさとのために役立ちたいと、患者が身を寄せる避難所を巡回し、2月には診療を再開した。あれから17年。瀨戸さんは「大好きなまち」で住民に寄り添い続けている。

 前回の能登半島地震が起きた際、瀨戸さんは能登町の公立宇出津総合病院に勤務していた。地元の門前町は被害が大きく、自宅も倒壊したが「地域を支えたい」との思いで災害医療チームに加わり、避難所を巡回した。

 今回の地震で、修復した自宅が再び全壊した。隣接する診療所は倒壊を逃れたものの「自分も高齢となり、昔に比べてパワーはない」と発生直後は前向きな気持ちになれなかった。

 しかし、どうしても患者のことが気になった。避難所へ患者の様子を見に行くにつれ、一刻も早い診療再開の思いを強くした。診療所で生活しながら2月から患者を迎え、4月からは92歳の母と仮設住宅に入居するという。

 前回の地震で医療チームの一員として門前町を回り、高齢者の多い地域なのに医療機関が少ない状況を痛感した瀨戸さん。「まちのお医者さん」と慕われた父の後を継ぐ形で瀨戸医院を開業したのは2020年だった。

 診療所裏に「桜の成長とともに診療所を発展させていきたい」と開業記念に住民と植えたカワヅザクラがもうすぐ満開を迎える。「頑張れているのはまちの皆さんの笑顔が見られるから。これからも地域医療に貢献していきたい」。瀨戸さんは力強く語った。

© 株式会社北國新聞社