航空石川福森投手、伝令で鼓舞 輪島で被災

常総学院との1回戦、ベンチで笑顔を見せる航空石川・福森投手

  ●家族らアルプス席で涙

 航空石川20人のベンチ入りメンバーで唯一の石川県出身者である背番号19の福森誠也投手(七尾市出身)に登板機会はなかった。それでも八回2死満塁のピンチで伝令に送られ、笑顔でマウンドへ走り、仲間を鼓舞した。

 正月は輪島市の祖母宅で地震に遭い、倒れた家具で腰の骨を折った祖母の早瀬舞子さん(67)を背負って高台へ走った。日常生活すら困難な状況で「野球を諦めよう」とも思ったが、運営を手伝った七尾市の避難所の住民らにも背中を押され、白球を追った。

 系列校がある山梨に避難した1月中旬、中村隆監督から「福森が見てきたことをみんなに話してほしい」と提案された。気乗りはしなかったが「少しでもみんなの心に響いてくれば」と30人を前に言葉を紡ぐと、自然と心が軽くなった。

  ●祖母「感無量」

 試合後、福森選手は「抑えてくれたのでいい伝令になったかな。でも勝ちたかった」と悔し涙。アルプス席の母恭子さん(37)は「伝令で出てくる息子を見られただけで十分。楽しかった」とうれし涙を流した。つえを手に観戦した祖母の早瀬さんも「感無量」と孫の雄姿に目を細めた。

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