東急プラザ蒲田4階にある喫茶『シビタス』。
旧蒲田東急ビルの開業と同時に、万惣の蒲田支店として1968年にオープンした。
万惣神田本店で人気のホットケーキをメニューにかかげた。
以来半世紀以上、厨房でホットケーキを焼き続けている。
その間、いろいろな人が万惣のホットケーキを提供してきた。
現在のホットケーキ担当は、店長の黒川義正さん。
「30年近く毎日ホットーケーキを焼いています」
ホットケーキを紹介する前に、黒川店長のプロフィールから。
「20歳で万惣に入社。はじめて配属されたのは、ららぽーと船橋(現ららぽーとTOKYO-BAY)にあった万惣そごう店でした」
黒川さんによれば、万惣には高級路線の店舗と、庶民的な店舗があったという。
船橋そごうにあった万惣は高級路線で、ホットケーキではなく、クレープやフレッシュジュースといった、いまでいうハイソな商品を提供していた。
その後、千葉そごうの万惣に移動。
千葉そごうの万惣もハイソな店舗で、メニューにホットケーキはなかった。
1995年に東急プラザ蒲田店に配属。
ホットケーキとは縁がなかった黒川さんだったが、入社27年目で初めてホットケーキの焼き方を上司に教えてもらった。
「ホットケーキを焼き始めて今年で30年目になります」
前日仕込んだ生地を焼いているそうだ。
「寝かせたほうがしっかりとふくらんでくれるからです」
焼いているところを見せていただいた。
4枚焼いてくれたのだが、どれもほぼ同じ大きさ。
素人はなかなか同じ大きさには焼けない。
ひっくり返すタイミングも絶妙。
焼き上がってくると、ホットケーキ特有の芳しい、甘い香りがただよいはじめた。
皿に盛り、バターをのせればホットケーキ(700円/以下すべて税込)の完成。
「バターは日高の有塩バターとよつ葉バターを交互に使っています」
「シロップはお客様ご自身でかけていただきます」
焼き上がったホットケーキに自家製メイプル風味シロップが入ったポットをそえて出す。
この店ではシロップをかけてもらえないのだろうか。
「お客様ご自身でかけていただきます。皆さん、シロップが大好きなんです。好きなだけかけてください(笑)。おかわりを頼まれればお出しします」
なかには皿に残ったシロップを飲む人もいるそうな。
万惣直系のシビタスが焼き続けてきたホットケーキはあまり大きくはないが、やや厚みがある気がした。
香りもよく、ほどよく甘い。
「ホットケーキと一緒に市美多寿ブレンド(570円)を飲んでみませんか。ホットケーキと合うようにブレンドしたコーヒーです」
本来砂糖とミルクが付くのかもしれないが、シロップをかけたホットケーキはブラックでやるのがいちばん。
コーヒーを飲むと口の中が新鮮になり、ホットケーキをおいしくいただけた。
ホットケーキは売り切れ御免。早い時間の来店がベスト
10時の開店と同時にホットケーキを焼きはじめるそうだ。
週末ともなれば、ホットケーキ目当ての人が大勢押し寄せ、行列ができる。
待つ人のために店の外に椅子の用意があった。
「【自分で、うまく焼けたと思うのは、一日にいくらもありません】という加茂さんの言葉を、池波正太郎さんが『むかしの味』(新潮文庫)で紹介しています。この店で30年近く毎日ホットケーキを焼かせていただいていますが、うまく焼けたと思えるホットケーキは少ないです」
蒲田東急ビルの屋上には、小さな小さな遊覧車がある。
昭和の香りがする遊覧車に乗り、むかしの味がするホットケーキを食べてこよう。
【シビタス】店舗情報
住所/東京都大田区西蒲田7-69-1東急プラザ蒲田 4F
電話/ 03-3733-5775
営業時間/10:00~20:00(ホットケーキは売り切れ御免)
定休日/ビルの休館日に準じる
ホットケーキとドリンクをセットで頼むとドリンク代が110円安くなる
(うまいめし/ 中島 茂信)