館岩での営巣、もう一度 酒田市、「飛島ウミネコ繁殖地」保全へ検討組織

近年ウミネコの営巣が確認されていない館岩(左)と、多くの営巣が確認されている百合島=昨年9月、酒田市・飛島

 酒田市は2024年度、国指定天然記念物「飛島ウミネコ繁殖地」の保全に向けて、有識者による検討組織を立ち上げる。繁殖地の一つである館(たて)岩では、野良猫による捕食などが一因となり、14年から営巣が確認されていない。検討組織は5月にも島内で現地調査を行い、適切な保全や詳細な調査の方法について議論を進める。

 飛島ウミネコ繁殖地は1938(昭和13)年に国の天然記念物に指定された。主な繁殖地は本島から西に約1.5キロの御積島(おしゃくじま)とさらに南方500メートルにある烏帽子(えぼし)群島、本島南部の館岩と百合島がある。島にはウミネコが11月から2月にかけて飛来する。5月ごろから産卵が始まって幼鳥が育ち、8月には島を離れる。

 環境省自然環境局生物多様性センターが5年置きに行っている調査によると、館岩での営巣数は2009年が173だったのに比べて、14年と19年は0だった。同じ調査で百合島は09年が135、14年が182、19年が195で、館岩だけ営巣が確認されていない。

 原因の一つとみられるのが、ネコによる捕食だ。島には主に島民に餌をもらいながら生息する野良猫が多いが、ウミネコも襲うとみられる。19年の調査では実際に成鳥をネコが捕食する様子が確認されている。飛島と地続きになっている館岩は、港や集落がある勝浦地区を一望できるスポットで、観光客が上る階段が設置されている。一部崩落し現在は、人は通行できなくなっているが、ネコはいまだに出入りできる状況だ。市文化政策課によると、背の高い草が生い茂っているためウミネコが巣を作りづらい環境になっていることも一因として考えられるという。

 市は24年度に文化管理事業として約50万円計上しており、大学教授や動物愛護団体、地元住民による検討組織を立ち上げ、5月に現地調査を行う。同課の担当者は「保全に向けてどのような調査が必要か検討する」としている。

島に生息する野良猫。ウミネコを襲い、捕食するとされる=昨年9月、酒田市・飛島

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