桜島研究43年…井口正人・京大教授が3月末退官 「火山防災の肝は観測体制」坑道整備に尽力、噴火メカニズム解明を追究

3月末で退官する井口正人教授=21日、鹿児島市桜島横山町の京大火山活動研究センター

 43年にわたり桜島の観測や噴火予知など火山研究に尽力した京都大学防災研究所の井口正人教授(65)が、3月末で退官する。同大火山活動研究センター(鹿児島市桜島横山町)で噴火のメカニズム解明を追究。自治体への防災体制の助言、一般向けや地域に密着した講演会など実用的な分野でも貢献した。

 観測体制が火山防災に最重要だとし、桜島に3本ある観測坑道の整備に携わった。マグマの圧力が下がることで噴火が起こるメカニズムを観測により初めて実証。離島を含め県内の活火山や、インドネシアでの研究にも長年取り組んだ。

 岡山県津山市出身。京大理学部から大学院に入って間もない1981(昭和56)年6月、桜島火山観測所に助手として赴任した。2012年に同センター長に就任した。

 日本火山学会会長も務めた。19年には火山学の発展に寄与したとして同学会賞を、火山防災に貢献したとして南日本文化賞(学術部門)を受賞した。

 井口教授は今後も鹿児島市に住み、気象庁長官の私的諮問機関である火山噴火予知連絡会の委員を担当。文部科学省が4月に立ち上げる「火山調査研究推進本部」で調査委員会の委員に内定している。110年前の大正噴火で噴出したマグマのほぼ全量が再び蓄積しているとみており、「大規模噴火への警戒を要す時期に入った。火山防災への理解が広がるための活動に今後も携わっていきたい」と話した。

 後任には同センターで研究を続ける京大防災研究所の中道治久准教授(51)が就任する。

〈関連〉2011年、観測坑道で井口正人准教授(当時、中央)から機器の説明を受けるインドネシア政府の専門家=鹿児島市の桜島

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