鳥取県中部のJA系スーパー、Aコープトピア店が、3月26日、閉店しました。鳥取県では、相次いでJA系スーパーの閉店が決定し、これで、県内ではJA系スーパーがゼロとなりました。
事業の引継ぎも難航していて、住民や取引業者の間で不安が広がっていますが、なぜ農業県のはずの鳥取県で生き残ることができなかったのでしょうか。
鳥取県琴浦町にあるJA系スーパー、Aコープトピア店。26日の営業を最後に48年の歴史に幕を閉じました。
店には、午前中から多くの地元客が詰めかけました。
営業最終日とあって、店内商品のほとんどが半額という大セール。
思い出が詰まった店で、袋いっぱいに最後の買い物をして店を出る客の姿もありました。
買い物客は
「もう何十年も通ってきたところです。大変です」
買い物客は
「名残惜しくてきょうは絶対に雨風が吹いても来ようと思って来ました。もういろいろですよ。いろいろ(買いました)。きょうは記念にもなるし」
鳥取県内のJA系スーパーをめぐっては、経営悪化などを理由に、2023年、JA鳥取いなば・JA鳥取中央・JA鳥取西部から相次いで、スーパー閉店の発表がありました。
26日のAコープトピア店の閉店で、県内のJA系スーパーは「ゼロ」となります。
JA鳥取中央 企画管理部 丸山保 部長
「長い間ご利用いただいて、残念ですけど、諸条件によって経営が難しくなって断念することになりました」
県中部では、トピア店を含む、Aコープ4店舗が閉店。
JA鳥取中央によりますと、赤碕店は2023年10月、新たに「東宝ストア赤碕店」としてオープンし、下北条店は、3月1日、リサイクルショップを運営する企業と建物の賃貸契約を結んだとのことです。
しかし、残る2店舗については、現在引継ぎ先が見つかっていない状況です。
そのうち、トピア店については、県中部でスーパーを展開する東宝企業が事業を引き継ぐ検討をしていましたが、2023年12月、引き継ぎを断念することを明らかにしたということです。
また、県内全体でみると、閉店したJA系スーパー17店舗のうち9店舗の引継ぎ先が未定で、引き継ぎ先が見つからなかった県東部のトスク本店は、耐震の関係で解体が決まっています。
なぜ、JA系スーパーは、鳥取県で生き残ることができなかったのでしょうか。
専門家はいくつかの要因を分析します。
公立鳥取環境大学 経営学部 竹内由佳 副学部長
「ドラッグストアや単身者だと、コンビニエンスストアも毎日の食事を買う場所として選択肢に入ると思うんです。ライバルが増えたところで、地元スーパーとしてどこと戦うか決めづらい、色んな敵が生まれてしまったというところがあると思います」
こうした厳しい環境に加えて、そもそも農業従事者が減っているということも大きな要因と考えられるといいます。
農業従事者が減っているということは、年々JAが活動できる資金が減少しているということ。さらに、近年は飼料代や燃料代が高騰するなど、状況は厳しくなる一方です。
公立鳥取環境大学 経営学部 竹内由佳 副学部長
「営農を考えたときに、関係がない所、できるだけ遠い所から手を引くことを考えると思います。となると、お金関係は置いておかなきゃとなるので金融系、JAバンクは置いておく。だから、どうしても小売りの方から整理していかざるを得ない状況なんだと思います」
では、なぜ引き継ぎ先が見つからないのでしょうか。経営学の視点から考えられる理由とは…
公立鳥取環境大学 経営学部 竹内由佳 副学部長
「人が来る範囲、ここに住んでいる人は何人いるか目で見て分かってしまう所で、経営はしづらい。やっぱり、企業も利益というか、自分たちが食べていく分、お客さんにサービスしていくお金を稼がなくてはいけないとなると、引いてしまう部分はあるのかなと思います」
専門家が指摘したのは、来店が見込める客が住んでいる範囲「商圏」の狭さと人口減少問題です。
こうした、企業努力ではどうにもできない問題が、店舗引き継ぎのハードルを上げてしまうのだといいます。
公立鳥取環境大学 経営学部 竹内由佳 副学部長
「事業引き継ぎとなったら基本的に社会貢献に近くなっちゃうので。それでもやる、もしくはマイナスが出ない程度に頑張る、ということになると思います」
そのほかにも、店舗の老朽化による改装コストや建て替えコストが大きいことなども考えられるということです。
JA系スーパーの閉店は、地域に大きな課題を残しています。