「老後はゆっくり過ごそう」から急転直下…「タワマン・年金暮らし夫婦」を襲うまさかの事態

(※画像はイメージです/PIXTA)

憧れだったタワマンでの生活。老後はゆっくり過ごそうと考えていたところ、まさかの事態が発生して……?

退職金を使ってタワーマンションを購入したものの…

共働きだったA夫婦。「ちょっと早めのリタイアをして、老後くらいはゆっくり過ごそう」ということで、夫婦ともに早期退職。退職金を使ってタワーマンションの住宅ローンを繰り上げ返済し、完済しました。

A夫婦の両親はともに他界。子どもはおらず、きょうだいを含め親戚とも疎遠になっていることから、2人には「お金を貯める」「資産を誰かに残す」という考えはありませんでした。貯金は少ないものの、日銭に困ることはありません。このまま生活する分には問題ないだろうと考え、質素ながらも楽しい老後を過ごしていました。

しばらくして年金生活に入り、楽しく老後を過ごしていたA夫婦でしたが、突然の知らせに戸惑います。「タワーマンションの大規模修繕」でまとまったお金が必要になるというのです。

マンションに長く住んでいると、経年劣化によるさまざまな問題が生じます。国土交通省『令和3年度 マンション大規模修繕工事に関する実態調査』によると、多くのマンションで、1回目の大規模修繕工事は築15年以下、2回目の修繕工事は築26年~30年、3回目の修繕工事は築41年以上で実施される割合が高くなっています。

長く快適に住み続けるには、定期的な修繕が必要です。特にタワーマンションのような超高層ビルでは費用が高額になることもあり、事前の準備がさらに重要になります。

多くの場合、マンションの大規模修繕は月額1万円前後の積立金から支払われます。しかし、A夫婦のマンションでは月々の修繕費が2000円で、大規模修繕を行うときに一括で50万円支払うことになっていました。

この金額は決して高いほうではありません。同調査によると、タワーマンションの大規模修繕では大規模修繕工事の1戸あたりの負担額は、100万円~125万円は27.0%、75万円~100万円は24.7%、125万円~150万円は17.4%となっています。

「次は払えない?」…頭を悩ませるマンションの修繕費問題

一度目の工事では、修繕費用を用意することができたA夫婦でしたが、次の工事への不安が頭をもたげます。

「体が弱ってきた今、このまま住み続けていいのか不安になっています。50万円はなんとかなりましたが、今回より大きな金額が必要になったらと思うと……」

次の工事も大規模修繕になるとは限りません。建て替えになるとさらにまとまったお金が必要になる場合があります。幸いなことにA夫婦には、まだ貯金に余裕がありますし、年金もあるのでいまのところ困ることはありませんが、いざとなったときに頼れる親戚がいないことも若干の不安を掻きたてるようです。

日本年金機構『令和5年4月分からの年金額等について』によると、令和5年度、平均的な収入をもとにした年金の給与水準は、国民年金(老齢基礎年金(満額))が月額6万6,250円、厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)が22万4,482円です。

一方、総務省『家計調査 家計収支編 2023年』によると、「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」の平均的な消費支出は25万959円。毎月3万円程度、貯蓄の切り崩しが必要となるイメージです。

急なお金は、人生のあらゆるシーンで必要となるもの。終の棲家が決まってもう安心……というわけにはいきません。たとえ資金繰りに余裕があったとしても、中長期的な人生設計は必須といえます。

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