未練のある元彼から復縁を求められたら「また付き合える!」とうれしくなりますよね。
でも、元彼が求める関係は以前とは違っていて、実は「期間限定の恋人」がほしいだけだったとしたら……。
未練があると元恋人からの要求は何でも受け入れてしまいそうですが、自分を大事にする選択が大切です。
元彼からの「提案」に首をかしげた女性は、どんな道を選んだのでしょうか。
後悔が残る別れ
麻子さん(仮名/31歳)は、2ヶ月前に別れた元彼について悩んでいました。
自分でも「思い詰める癖がある」と自覚している麻子さんは、こちらから告白して付き合っていた彼氏がいましたが、「気持ちが重い」と別れを切り出された側でした。
LINEの返信が遅いと返ってくるまで何時間でも待っていたり、彼氏が「体調が悪い」と言えばただの倦怠感でも家まで行って夜中まで看病したり、彼氏の状態に集中しすぎる付き合い方をしていたといいます。
「だから、『気持ちはうれしいけど、何でもやり過ぎでこっちが申し訳なくなる』と言われたときは、それなら私が変わるからと伝えました。
でも、最終的に『好きかどうかわからなくなったから』って理由で振られちゃって……」
「お付き合いそのものに興味をなくしているように見えた」という彼氏は、別れ話が出る前の1ヶ月ほどは会う時間も少なく、一緒に食事をしてそのまま解散のようなそっけない関わり方をしていたそうです。
自分に問題があったせいで振られたと思っている麻子さんは、後悔を抱えたまま、元彼への未練も捨てられずにいました。
「よりを戻してもらうには、私が成長するしかない」。いつか復縁してもらうことを夢見て、麻子さんは自分の恋愛観や付き合い方を見直していわゆる「自分磨き」に時間を費やしている状態でした。
急な元彼からの連絡で…
そんな麻子さんに元彼から連絡があったのが、半月ほど前。
ふたりが好きだった漫画が映画化され、その公開が決まったときでした。
「一緒に観に行かない?と言われて、何が起こっているのかわからないくらい有頂天になりましたね。
ふたりきりの時間を持てるくらいまだ自分は身近な存在なのだ、と勘違いしていました」
元彼に言われるがまま、以前のように迎えに来てもらって映画が終わればおしゃれなレストランで食事をして、麻子さんは復縁の可能性を強く感じたそうです。
まだ恋愛感情があってよりを戻したいと思っていることは、会う前に伝えていたという麻子さん。
「気持ちを隠して会うのは私が難しくて、復縁したいことを最初に言っておけば元彼も考えてくれると思いました」
素直に気持ちを伝えることが誠意だと信じていた麻子さんに、元彼は「ありがとう」とだけ返して、映画デートの日は特に何もなく終わったものの、次の日からLINEでのやり取りが復活します。
自分の近況や世間の話題を送ってくる元彼に返信しながら、「しつこくしたらまた重いと思われる」と考えた麻子さんは、復縁を迫ることなく元彼の接触に応えていたそうです。
平日夜の食事にも誘われ、その週の日曜日にはまた買い物デートの話も出て、元彼のほうが積極的に関わろうとしているのは、LINEのメッセージから伝わってきました。
「このまま順調に進めばきっとやり直せる」と思った麻子さんは、以前とは違った自分を知ってもらうために、元彼の恋愛事情などプライベートに深く踏み込むことなく、そんな状態を受け入れていきます。
次の週になり「やり直してほしい」と元彼から言われたときは、幸せな気持ちでいっぱいになりました。
おかしな「提案」に
「振り返ると、映画に誘われたときからやり直そうと言われるまで2週間で、すごく早かったですね。
そのときは元彼のほうから連絡が来ることが幸せで特に変だなとは思わなかったのですが、私がおとなしく何でも従うから、元彼はすぐ『いける』と思ったのだと今は感じています」
未練の残る元彼と以前と同じような時間を過ごし、やり直したいと言われたら、誰だってうれしくなるしその気持ちを疑うようなことはしないはずです。
素直に「うれしい、ありがとう」と返した麻子さんでしたが、幸せな気持ちにふっと影が下りたのは、元彼からの「提案」を聞いたときでした。
「恋人ではなく、彼女候補として付き合いたい」。
「やり直したい」の意味は昔のような恋人関係のことだと信じていた麻子さんは、元彼から飛び出した「彼女候補」という言葉に違和感を覚えます。
元彼の言う「付き合いたい」は、友達以上の関係ではあるけれど恋人ではない、麻子さんを彼女になる可能性のある女性として置くつながりでした。
「3ヶ月はその状態でいたいと言われ、混乱しました。
3ヶ月の間に私が彼女にふさわしいかどうかを見定めるって意味で、その間は要するに都合のいい女でいろってことですよね」
復縁したいこちらの気持ちを知っていてそんな提案をする元彼の様子は、「ふたりの関係を決めるのは俺」という圧力を感じたと、麻子さんはいいます。
本当に好きなら「彼女候補」なんて言葉は出ないはずで、期間を設けて自分を縛ろうとする姿は、麻子さんにとってはうれしいとは思えないものでした。
麻子さんは受け入れるだろうと信じ切っているのか、「俺もよく考えた結果なんだ」と強い口調で続ける元彼の様子は、自分に未練のある元カノを操作することに何の疑問も持っていないようだったと、麻子さんは振り返ります。
受け入れがたい「提案」に
「元彼には何て返したのですか」と尋ねると、麻子さんは大きく息を吸ってから
「お断りします、とはっきり言いました」
と、惑いのない声で答えました。
「あなたのことはまだ好きだけど、だから会ってきたけど、友達以上恋人未満の彼女候補なんてまったくうれしくないと言いました。
だって、3ヶ月の間に私のことを気に入らなかったらまた捨てるって意味で、好かれるためにお前が努力しろって言っているのと同じですよね?
そこまでなめられて、それでも復縁したいとは思わなかったです」
元彼のほうは、「よりを戻すためなら何でもするだろう」と麻子さんを見ていたのかもしれません。
自分に未練があるのをわかっていて、誘えば断らずどんな話も聞いてくれて、「復縁できる」という希望をちらつかせれば、こんな都合のいい提案でも乗ってくるはずと思っていた可能性はあります。
麻子さんが危機感を覚えたのは、「やり直したい」と言ったときの元彼の振る舞いにもありました。
「私を家に送るクルマのなかで、手を握ってきたのですね。
私はうれしいから振り払うなんてしなかったのですが、その後でこの提案をしてきたので、『都合のいい女』って言葉が浮かびました」
元彼の「提案」には、好意ではないおかしな下心があると感じ取った麻子さんは、
「悲しいし情けなかったけれど、元彼のことが好きだからこそ、うんとは言えませんでした」
と、そのときの自分の決断について今も後悔していないことを話してくれました。
「好き」を大切にするからこそ
まだ愛情が残る元彼から体の接触を求められれば、うれしい気持ちのまま受け入れてしまう女性もいるかもしれません。
ですが、誠実な交際を考えるのであれば、恋人関係ではない元カノの未練につけこんで自分の好きにできる存在にはしないはずです。
3ヶ月という期間を設けるのも一方的なやり方で、「付き合いたければ好かれる努力をしろ」と押し付けるのは、対等ではありません。
「重たい」と言われて振られた麻子さんは、そのときのことを思い出して
「自分に一途だった私を知っているからこそ、未練があるとわかって調子に乗ったのだと思います」
と、都合のいい女として利用することを思い付いた元彼について吐き捨てるように言いました。
元彼のことが好きだからこそ、その気持ちを弄ばれるのが我慢できなかった麻子さんの決断は、自分のために正解といえます。
未練があると、不毛な関係でもつながっていることに希望を持ってしまい、気がつけば元彼の好き勝手に扱われる自分を許してしまう、ということもあります。
それは何よりも自分自身をないがしろにする状態で、そんな現実は最初から受け入れないのが正しい選択です。
「おかげで、元彼への未練はすっかり消えました。
付き合い方を間違えたら、別れた後でもこんなことが起こるのだと勉強になりましたね」
と笑いながら話す麻子さんは、元彼に重いと思われていた交際の状態について改めて反省し、自分の「好き」を大切にする意味を考えています。
お付き合いはお互いを尊重する気持ちがないとうまくいかず、愛情の深さから度が過ぎた奉仕が続くのは対等な関係とはいえません。
好意や愛情は当たり前に向けられるものではなく、一緒に慈しんでいく姿勢を持てるのが幸せな恋愛だと、改めて思いました。
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自分への愛情を利用して都合のいい関係を求める人は、そもそも恋愛を軽んじているのであり、誠意を持った人間にそのやり方が通用するはずはありません。
自分を当然に大切にできるのが幸せな恋愛のはずで、相手のことがどれだけ好きであっても、おかしな関係は手にしないのが正解。
自分を正しく守る選択が、その後の恋愛でも相手の気持ちを大切にする姿勢につながります。
(mimot.(ミモット)/ 弘田 香)