国立新美術館では、「マティス 自由なフォルム」が2024年5月27日(日)まで開催されています。マティスが晩年、精力的に取り組んだ切り紙絵に焦点を当てた日本初の展覧会です。ニース市マティス美術館よりマティスの初期から晩年にかけての絵画、素描、版画、切り紙絵、彫刻など150作品が紹介されています。
アンリ・マティス
フランスの画家。フォーヴィスム(野獣派)のリーダー的存在であり、活動が短期間で終わった後も20世紀を代表する芸術家の一人として活動を続けました。
自然をこよなく愛し「色彩の魔術師」と謳われ、絵画だけではなく彫刻および版画も手がけていました。※主催者側の許可を得て撮影しています。
会場にはマティスの描いた油彩画、彫刻、版画、テキスタイル等の作品や資料が展示されています。
会場風景 © Succession H. Matisse
「私の最初の絵画」
マティスの故郷であるフランス北部で描かれた作品や、フォーヴィスムの時代へ向かう頃に制作された作品が紹介されています。故郷の法律事務所で働いていたマティスは、体調を崩して病に倒れ、母親から絵具箱を買い与えられたのが芸術の道へ進むきっかけとなりました。マティスが「私の最初の絵画」と称した作品が《本のある静物》です。
アンリ・マティス《本のある静物》1890年 油彩/カンヴァス、21.5 × 27 cm、ニース市マティス美術館蔵 © Succession H. Matisse
巨匠マティスの愛した手法、「切り紙絵」
マティスが晩年、精力的に取り組んだ切り紙絵に焦点を当てた展覧会は日本初です。油絵から切り絵にシフトしたのは72歳の頃です。病気になって体力が衰え、それと同時に切り絵に移行したそうです。体力の衰えから切り絵にシフトしていますが、その後も精力的に創作活動を行っていきました。
会場風景 © Succession H. Matisse
4.1×8.7メートル!大作《花と果実》を日本初公開
ニース市マティス美術館のメインホールで来場者を迎える切り紙絵の大作《花と果実》。本展のために修復を経て、初来日です。5枚のカンヴァスが繋がって構成されており、会場では一際存在感を感じる作品です。
アンリ・マティス《花と果実》1952-1953年
切り紙絵、410 × 870 cm、ニース市マティス美術館蔵 © Succession H. Matisse
本展覧会のメインビジュアルにもなっている作品、《ブルー・ヌード IV》は右手を頭の後ろに置き、左手は地面につけ、右脚は地面に寝かせ、左脚は右脚の後ろと複雑な構図です。切紙絵を重ね合わせた作品です。4点の《ブルー・ヌード》作品の中で青の切り絵が重なり合う部分が多く、存在感のある作品です。
アンリ・マティス《ブルー・ヌード IV》1952年 切り紙絵、103 × 74 cm、オルセー美術館蔵(ニース市マティス美術館寄託)© Succession H. Matisse
マティスはニースから約20kmの場所にあるヴァンスのロザリオ礼拝堂の建設に1948年から4年間にわたって携わり、自身でもそれを芸術人生の集大成とみなしています。
アンリ・マティス《ヴァンス礼拝堂の外観のマケット(1/20)》 ニース市マティス美術館蔵© Succession H. Matisse
マティス芸術の集大成、ヴァンスのロザリオ礼拝堂を体感
会場ではヴァンスのロザリオ礼拝堂内部を体感できる空間がほぼ原寸大で再現されています。
約3分のインターバルで一日の日差しのうつろいで行く様子がプロジェクションマッピングで再現されています。
まるで本物の礼拝堂のようで、神聖な雰囲気が漂います。
ステンドグラスの配色も素敵です。南仏ニースのエッセンスを感じます。
マティスデザインの儀礼用装身具も展示されています。ヴァンスのロザリオ礼拝堂のステンドグラスとリンクしたカラーの配色ですね。
展示風景 © Succession H. Matisse
ミュージアムショップ
ミュージアムショップではマティス作品をモチーフにしたクリアファイルが販売されています。
食器(皿)もオリジナル感があって料理も映えそうです。
ミュージアムショップ
「マティス 自由なフォルム」は、当初2021年の開催を予定していましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期しており、3年越しにようやく開催されています。
解放感のある展示室で鑑賞する4.1×8.7メートルの大作《花と果実》とほぼ原寸大で再現されたヴァンスのロザリオ礼拝堂内部は圧巻の迫力です。
満を持して3年振りに開催された「マティス 自由なフォルム」。この機会に是非会場で作品をご覧になってみては如何でしょうか。