「飛躍があり不自然、不合理」検察側の鑑定書を批判 「5点の衣類」の血痕は黒く…弁護側の証人が主張【袴田事件再審公判ドキュメント⑪】

1966年、静岡県の旧清水市(現・静岡市清水区)で一家4人が殺害されたいわゆる「袴田事件」で死刑が確定している袴田巖さん(88)の再審=やり直し裁判の第11回公判が3月26日開かれました。3日間連続の証人尋問は2日目となり、弁護団の請求した証人に対する質問が行われました。弁護側の証人は、検察側の専門家がまとめた鑑定書に対して「飛躍があり不自然、不合理」だと批判しました。
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<LIVEしずおか 滝澤悠希キャスター>
「きょうは弁護団の証人尋問です。袴田さんの再審開始を認めた東京高裁でも評価をされた、血痕が黒くなるメカニズムをまとめた法医学者が法廷に立ちます」

袴田巖さん(88)は1966年、静岡県旧清水市(現静岡市清水区)で一家4人が殺害された事件で死刑が確定しましたが、2023年10月から再審が始まり、ヤマ場の証人尋問を迎えています。

最大の争点は、事件発生から1年2か月後に現場のみそタンクから発見され、犯行着衣とされた「5点の衣類」の血痕に赤みが残るのか、化学反応で黒く変化するのかという点です。

弁護団は「1年以上みそに漬かった血痕は黒くなるため、『5点の衣類』は捏造された証拠」と主張。きょう弁護側の証人として法廷に立ったのは旭川医科大学の清水恵子教授と奥田勝博助教で血痕は赤みが消え、黒くなるメカニズムを鑑定書にまとめました。

<旭川医科大学 奥田勝博助教>
「(血痕が黒くなるのに)1年2か月という時間は染みこむまでには十分すぎる時間」

実験では、みそのような弱い酸や高い塩分濃度だと、赤みの成分=ヘモグロビンがゆっくりと酸化していき、血液中のたんぱく質とみその中の糖が触れる事による化学反応などで、長時間かけて黒くなると結論付けています。

25日の裁判で、検察側の証人である専門家から「実験の条件が不十分」と指摘されたことについて、法廷でこう語りました。

<LIVEしずおか 滝澤悠希キャスター>
「法廷に立った清水教授は、検察の証人は、みそタンクの中にほぼ酸素が無いように決めつけていて、立論に飛躍があり、不自然・不合理と強調しました」

弁護側の証人は5点の衣類が、みそタンクに入れられる前に十分に酸素に触れていたことなどから、化学反応は確実に進み、1年以上みそに漬かれば「血痕は黒くなる」と締めくくりました。

また、奥田助教は、血液や空気のほか、5点の衣類を入れた麻袋、みその原材料、みそのそれぞれに含まれる酸素の絶対量を示し、酸素は十分な量があり、絶対量が足りないと酸化は完了しないが、濃度が薄いことは時間がかかるだけだと語りました。

<袴田さんの姉・ひで子さん(91)>
「検察は赤みが残ることを一生懸命引き出そうと思って、大変苦労して質問していました」

<袴田弁護団 小川秀世弁護士>
「(弁護側の専門家は)検察側の証人からの批判というのは、科学者の反論とは思えないとはっきりとおっしゃっていた」

<静岡地検 奥田洋平次席検事>
「何らかの化学反応が起こっていただろうというのは否定できない。その中で弁護側は血痕が黒くなるという主張をしているが、そういう風な証拠はないでしょうということ。その点については認識は違う」

公判は27日も開かれ、検察側、弁護側双方の証人が法廷に立ち、裁判官が質問するという異例の形で尋問が行われます。

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