人手不足懸念の引っ越し業界、年度末の繁忙期 「2024年問題」目前、価格転嫁や時季分散を

トラックから引っ越し用の荷物を下ろす作業員。残業規制の強化を目前に、年度末の繁忙期を迎えている=山形市

 ドライバーの残業規制が来月から強化され、物流業界の人手不足が懸念される「2024年問題」を目前に引っ越し業界は年度末の繁忙期を迎えている。これまでも需要集中期は依頼に対応しきれない場合があり、各社は効率化などの経営努力を進めると同時に、価格転嫁や引っ越し時季の分散の必要性を訴えている。

 日本通運仙台支店(仙台市)は、この時季は通常の3倍ほど予約が入り、今月20日~4月7日ごろがピークという。同社では数年前から24年問題を見据えた取り組みを始め、県内でも今年、スマートフォンなどを使ったリモートによる見積もりを本格導入した。担当者は「営業担当の移動時間短縮で、ドライバーの労務管理に費やせる時間が増える」と期待を寄せる。一方、物流にかかるコストの増加や人手不足は深刻さを増している。「価格転嫁もやむを得ず、適正な運賃収受に向けた検討をしている」という。

 アート引越センター(大阪市)では、県内には主に荷造りや積み込みなどを行うスタッフが在籍している。残業規制を前に「積み込み時の運転手の待ち時間短縮など、長距離ドライバーが効率的に働けるよう、引き続き取り組む」としている。

 東北、関東地方を中心に引っ越しや運送業を展開する三八五(みやご)流通(青森県)では、3、4年前から運送手段の多様化や業務の効率化を進めてきた。引っ越し先が関東以南など遠方の場合、荷物をトラックから貨物列車のコンテナに詰め替え、夜間にまとめて運んでいる。残業時間の短縮とドライバーの負担軽減につながっているが、同社担当者は「業務効率化の効果は実感するものの、人手不足は依然として解決していない」。残業規制開始後の影響も「始まってみないと分からない部分も多い」と不安をのぞかせる。

 業界特有の事情として、3月下旬から4月上旬に仕事が集中することも課題。東北三八五流通山形主管支店(山形市)の押切喜夫支店長は「この時季は、どうしても需要に供給が追いつかず、依頼を断ることも多い」と明かす。残業規制への対応だけでなく、利用者の負担減少のためにも「人事異動の発表や着任時期が、より分散してくれるとありがたい」と話した。

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