ラテンアメリカ革命の鼓動を描く、ペルー現代史のドキュメンタリー映画『革命する大地』の予告編が解禁

4月27日(土)から新宿K's cinemaほか全国順次公開される、ゴンサロ・ベナべンテ・セコ監督『革命する大地』の予告編が解禁された。貴重なアーカイブ映像とインタビュー、数多くのペルー映画が散りばめられている。

▼映画『革命する大地』予告編

https://www.youtube.com/watch?v=mydzYoxTX6U

本作はベラスコ将軍(後に大統領)率いるいわゆる軍部革命政権によって公布された農地改革法(1969年)の失われた記憶と影響を、インタビュー、アーカイブ映像、数多くのペルー映画の映像を用いて再構築し、ペルーで起こった革命の是非を振り返るドキュメンタリー。

2019年にペルー本国で公開され、9万人以上を動員し、ペルードキュメンタリー史上最大のヒット作となり、2021年の総選挙前にテレビ放映も予定されていた。しかし、この映画が大衆に及ぼす影響を恐れた保守派が放送の延期を求めたとも言われている。

ペルー革命から約50年、今も政治的混迷が続くペルー。この先、ペルーはどこへ向かうのか? 暴力や銃以上に記憶された映像や物語が私たちの味方であることを問い直す。本作は革命によって社会に、民衆に何をもたらすのかを突き付ける。

社会の変遷を記憶し、抗う映像たちが問い直すものとは──

1969年にベラスコ大統領率いるいわゆる軍部革命政権によって公布された農地改革法は、それまでのペルーの土地と市民権をめぐる闘争に大きな変革をもたらした。ベラスコ大統領は先住民を半奴隷状態から解放した英雄と見る人と、彼が解体した地主寡頭制に不満を持ち独裁者と見る人とで、ペルー国内を二分する存在である。

ペルー革命前夜として、スペインからの独立を宣言してもなお続くスペイン植民地時代からの半封建主義的なペルーの社会構造が、アーカイブ映像と多数のインタビューや引用作品によって丁寧に語られていく。ペルーの国民的作家あるマリア・ホセ・アルゲダスや農民リーダーらが当時を振り返り告白する。 そして舞台は徐々に運命の1968年へと加速する。ペルー革命からベラスコ政権の瓦解まで、社会の変化を映画は鮮明に映し取った。

アーカイブ映像、インタビュー、映画…数々の映像から紐解く革命の歴史。現代へ脈々と受け継がれる、革命の記憶

本作に引用されている、2023年に生誕100年を迎えたアルマンド・ロブレス・ゴドイ監督(1923-2010)の『みどりの壁』(1970)は、ゴドイ監督の自伝的作品でもあると共に、ペルー革命を出発点として社会の問題と矛盾を描いた。フェデリコ・ガルシア監督は、ペルー革命後、それまで記録された映像や資料が破棄されていく中、ネガフィルムを盗み出し、アルゼンチンのブエノスアイレスにて『コンドルがうまれたところ』(1977)を完成させる。記憶を守ったのだ。

知識人たちは「農地改革は全員が市民になれる手段だった」と証言する一方で、農地改革後にペルーを待っていたのは暴力の時代だったのも確かだ。そして、「民主的であるなら多様性への寛容さが必要だ」と警鐘をならす。現代ペルーの知識人や政治家、文化人へのインタビューによって“ペルー革命”が再構築されていく。

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