事業再建へ100億円基金 国と県、金融機関が設立

  ●能登6市町対象

  ●「二重債務」減免、返済猶予 

 能登半島地震で大きな被害を受けた七尾以北6市町の事業者を対象に、国と石川県、地域金融機関などが共同で「復興支援ファンド」を設立することが27日、北國新聞社の取材で分かった。官民で総額100億円を出資し、地震前からの借り入れと再建にかかる新たな負担の「二重債務」に苦しむ企業や個人事業主に、債務の減免と返済猶予を行う。返済は最長15年後とし、能登に根を張り、なりわいを営んできた事業者の再起を後押しする。

  ●4月1日、七尾に窓口 

 ファンド設立に伴い、中小企業庁は4月1日、七尾商工会議所に「能登産業復興相談センター」を開設する。出資金融機関の職員らが事業計画の策定やファンドの活用を助言する。

 ファンドは伝統産業から観光・宿泊業、製造業、小売業、1次産業までほぼ全ての業種を対象とする。

 出資額は、中小企業庁が主管する中小企業基盤整備機構が49億円、政府系ファンドの地域経済活性化支援機構が30億円、県が5億円。地域金融機関などは、11億円を拠出する北國銀行のほか、北陸銀行、のと共栄、興能両信用金庫、県信用保証協会、商工中金が計4億円となる。

 同様のファンドは東日本大震災や熊本地震でも設けられ、東日本の事例では債務買い取りを受けた事業者の8割が再建した。熊本の復興支援ファンド(約50億円)に比べ、今回は総額も官の出資比率も大きいのが特徴で、政府関係者は「能登の事業者被害を深刻にとらえ、全面的に支援したいと考えている」と説明した。

  ●なりわい守る活用例

 想定される活用例はこうだ。温泉旅館を営むA社はコロナ下に受けた融資で2億円の債務があった。地震が起き、建物復旧に10億円が必要なところ、金融機関には既往債務を理由に新規融資を断られた。補助金など他の支援だけでは復旧できないA社だが、固定客がおり、再建できれば安定経営が見込める。

 このような場合、ファンドが地震前の債務の一部を金融機関から買い取り、金融機関側も一部債権を放棄してA社が新たな融資を受けられるようにする。買い取った債権は最長15年間返済を猶予する。

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