想像力しかない

 昨今は、注文すればたちまちテーブルの横に届き、「回転」という感じはあまりない。昔は違った。コンベアの上をぐるぐる巡る「回転ずし」は発明と呼んでもおかしくない▲その生みの親で、初めて回転ずし店を開いた白石義明さんは1950年代半ば、ビール工場の見学中にアイデアがひらめいたという。瓶の列がカーブを描き、流れるのを見て「これや」。想像力が道を開くのだと、時を超えて教えてくれる▲想像力に富む企業ならば今もある。発熱時、おでこに貼って熱を冷ますシート。のどを潤すスプレー…。数々のアイデア商品を小林製薬(大阪市)は生み出してきた▲「あったらいいなをカタチにする」を売り文句とするその会社はいま、紅こうじのサプリメントを巡る健康被害で社会を揺るがしている。サプリをのんだ2人の死亡が報告され、入院は100人を超えた▲紅こうじを含む商品の回収騒ぎは国内外に及び、売り文句とは裏腹に「あってはならない」事態が広がる。健康に役立つ「機能性表示食品」が健康を害するさまに、国民の不安と渋面も広がっている▲紅こうじの「未知の成分」が原因とみる向きもある。対策はたやすくないと察するが、あるとすれば不測の事態に備える「万が一」「もしかしたら」の想像力をおいてほかにない。(徹)

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