【早出し】サクランボ生産、強い味方 県、新型雨よけハウス実証開始

県が実証を開始したサクランボの新型雨よけハウス。降霜や高温の被害軽減へ被覆資材が追加されている=寒河江市・県園芸農業研究所

 サクランボの生産現場で近年、課題となっている霜や高温の被害軽減と、作業の安全性向上に向け、県は地元企業と協力し、新型の雨よけハウスを開発し、27日から実証事業を開始した。雨よけのフィルムに加え、内側に遮光性や保温効果があるシートを加えた二重構造で、屋根は片流れ式。フィルムなどは地上から巻き取ることができる。さらなる品質向上と省力化、安全性の向上が期待される。

 サクランボは雨に当たると、実が割れるなどするため、生産者の多くは収穫前にパイプハウスに上り、フィルムを張って雨よけをする。収穫後は風雪で破れないよう、被覆材を取り除いており、高所作業を強いられている。

 新型ハウスは、雨よけフィルムの内側に遮光と保温の性能があるシートを張り巡らすことができる。屋根部分の形状は片方だけに傾斜がついている片流れで、フィルムやシートは地上から巻き取って不要な際は収納できる構造だ。屋根部分や側面も開閉でき、暑さ対策の換気もできる。

 県職員の若手を中心に生産者を交えて機能などを検討し、園芸施設設計・施工などの鈴商(東根市)の協力で開発した。実証事業では、県園芸農業研究所(寒河江市)と生産者の園地で使用し、効果を確かめる。同研究所に圃場に設置されたのは幅16メートル、奥行き21メートル、高さ最大4.5メートルで、中には生産性向上のため樹高を低くく仕立てたサクランボの木4本が立っている。

 県は27日、同研究所で生産者団体の関係者などを集めて説明会を開いた。県の担当者は風への強度など課題があると説明し、「新型ハウスでの被害軽減効果や収穫量のデータを分析し、生産者らの意見も参考に改良していく」と話した。

 一方で、導入コストは従来の雨よけハウスの約2倍だ。JAさくらんぼひがしねの小松伸悟さん(31)は「ハウスに遮光や保温の機能を持たせる視点は面白い。効果と設置コストとの兼ね合いも含めて注目している」と話した。

 県によると、霜や高温による品質や収穫量への影響だけでなく、雨よけフィルムの設置や撤去の作業による転落事故(全治1カ月以上の重傷や死亡)は2019~23年の5年間で計25件発生している。

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