デフレ完全脱却へ最大の正念場、政府・日銀は緊密な連携堅持=岸田首相

Kentaro Sugiyama

[東京 28日 ロイター] - 岸田文雄首相は28日、2024年度予算の成立を受けた記者会見で、日銀の金融政策について「緩和的な金融環境が維持されることは適切」との認識を示すとともに、「デフレ完全脱却のための最大の正念場に当たって政府と日銀は緊密な連携を堅持していく」と語った。

岸田首相は、昨年を大きく上回る力強い賃上げの流れ、史上最高水準の設備投資、史上最高値圏の株価など「デフレから完全に脱却する千載一遇の歴史的チャンスを手にしている」と指摘。そのチャンスを生かせるかはこれからの対応次第であり「数十年に一度の正念場だ」と語った。

デフレ完全脱却の判断については、マクロ経済分析の観点と政治的な観点があると説明。前者は官民の専門家が様々な指標をもとに検討していくもの、後者は従来のコストカット型経済から脱して新たな経済成長のステージに移行することだと語った。

<為替、行き過ぎた動きにはあらゆる手段排除せず適切に対応>

岸田政権は、物価上昇を上回る構造的な賃上げを実現するとして、経済界に昨年を上回る水準の賃上げの実施を要請してきた。これも奏功し、連合がまとめている24年春闘の賃上げ率(定期昇給分を含む)は1次集計時点で5.28%と、91年の5.66%(最終集計)以来33年ぶりの高水準となり、春闘の結果を注目していた日銀も、3月の金融政策決定会合でマイナス金利政策の解除を含む大規模金融緩和策の修正に踏み切った。

もっとも、日銀がマイナス金利政策の解除後も当面は緩和的な金融環境が継続するとの見方を示したことで、外為市場でドル/円は決定会合前の149円前半から2円超円安が進行。27─28日にかけ、政府側から「行き過ぎた動きにはあらゆる手段を排除せず、適切な対応をとる」との考えが示されている。

首相は為替介入の必要性について具体的なコメントは避けたが、為替はファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが重要であり、過度な変動は望ましくないとする基本スタンスを説明。「政府として高い緊張感を持ち、為替動向についても注視していくが、行き過ぎた動きに対しては、あらゆる手段を排除せず適切な対応を取りたい」と語った。

日銀については、異次元の金融緩和政策から脱して新たな段階に踏み出すということ、前向きな経済の動きをさらに確実なものとする観点から緩和的な金融環境が維持されることーーこの2つを同時に表明したことは適切だと語った。

<訪米、日米の緊密な連携と強固な同盟関係示す>

首相は来月、国賓待遇で米国を訪問する予定となっている。大統領選のプロセスが進行する中での訪米となるが、「米国国内の選挙にかかわらず、国際社会が複雑で多様な課題を抱える中、日米同盟の重要性はますます高まっている」と指摘。日米の緊密な連携と強固な同盟関係を世界に示すことが重要だと話した。

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