大津高のタレントが揃うと言われる“3年周期”。今年は勝負の年、Jスカウトも太鼓判を押すポテンシャル「全員が良い」

3月25日から同28日にかけて大阪府堺市で開催されたのが、「PUMA CUP U-17 in SAKAI」だ。

東は前橋育英高から西は神村学園高まで、全国強豪の26チームが一堂に会する大会とあって、Jクラブや大学のスカウトが多数視察に訪れたなか、一番注目を集めたのは大津高。初戦で履正社高に8-0で大勝すると以降も快勝を続け、終わってみれば4試合で20得点・1失点という他を寄せ付けない成績を残して頂点に立った。

大津は大会前に福岡県で行なわれた国際大会「サニックスカップ」でも危なげない戦いぶりで優勝しており、チーム状態の良さが目を惹く。それもそのはずで、今年は大津にとっての勝負の年。大津は3年周期でタレント揃いの年が訪れると言われており、日本代表のDF谷口彰悟(アル・ラーヤン/UAE)をはじめ、7人ものJリーガーを輩出した1991年組がその筆頭だ。

以降もDF植田直通(鹿島アントラーズ)、FW豊川雄太(京都サンガF.C.)の1994年組、DF野田裕喜(柏レイソル)、MF河原創(サガン鳥栖)の1997年組、DF福島隼斗(栃木SC)、FW大崎舜(ロアッソ熊本)の2000年組と続く。

選手権で準優勝を果たした2003年組もGK佐藤瑠星(筑波大)、MF森田大智(早稲田大)など、大学経由でJリーガーになりそうな選手が揃っている。大津高では学年ごとに体操服の色が違い、3年に1度訪れる緑色の体操服をまとう世代が豊作の年だと自身もOBである山城朋大監督は口にする。

今年の最上級生はそうした3年周期にあたる代で、入学時から期待されてきた。ただタレントが揃うだけでなく、近年は経験値を積む舞台が整っていることも彼らの成長を促進してきたのは間違いない。

今年の3年生が入学した2022年からは、Aチームがプレミアリーグ、Bチームがプリンスリーグ九州に参戦。選手の多くが下級生のうちから高いレベルの舞台を経験してきた価値は大きく、MF嶋本悠大(3年)はこう語る。

「今年は昨年からプレミアで試合に出ている選手だけでなく、プリンスでも主役として出ていた選手が多い。選手層も厚いので、全員が主体となって気持ちよくプレーできています」

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経験値が豊富な選手が多いため、新チームへの移行もスムーズだ。2月に行なわれた九州新人大会でも対戦相手の監督が舌を巻くほど圧倒的な実力差を見せつけたが、神村学園高との決勝は0-1で敗戦。確かな手応えを感じ、一つ目のタイトル奪還に向けたモチベーションは高かっただけにショックも大きかったが、敗戦を機に選手の目の色が変わったという。

「チームとして一番変わったのは味方への要求。チームメートが簡単なミスをしたら、きちんと指摘するようになったので練習の雰囲気が変わった」と話すのはMF舛井悠悟(3年)。主将を務めるDF五嶋夏生(3年)も「各々があの一戦で負けた悔しさを持ちながら練習に取り組めているので、以前よりも強度が高く、良い質でやれている」と続ける。

加えて、積雪を回避するため、2月半ばから北海道コンサドーレ札幌が学校近くの大津町運動公園で長期間にわたるキャンプを実施。スタメンの多くがトレーニングパートナーとして、日替わりでの練習参加を経験したことも成長をさらに促進した。

PUMA CUPでは、ボランチからコンバートされたばかりのFW兼松将(3年)が5得点を奪い、得点王に輝いた。右サイドの舛井もスピードに決定力が加わり、ブレークの予感が漂う。昨年から主力を務める五嶋や嶋本は他との違いを感じさせるだけでなく、ピッチに立つ全員が主役クラスのプレーを披露している。視察に訪れたあるJクラブのスカウトも「誰か一人が良いのではなく全員が良い。穴がない」と太鼓判を押すほどだ。

「簡単に負けるようなチームではないと、みんなプライドを持ちながらやっています」と舛井は自信を覗かせるが、チームに気の緩みは見られない。

山城監督も「ここまで対戦してきたのは初見のチームばかり。特徴を知られたなかでどれだけやれるかは、シーズンが始まってみないと分からない。そこで出た課題に対してこれからやっていきたい」と気を引き締める。

強さが知れ渡れば渡るほど警戒網は強くなる。勝負の年であるがゆえに難しさもあるのは確かだが、今年の大津はそれすらも打ち破れるだけのポテンシャルを秘めている。

取材・文●森田将義

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