“唾液中のDNA解析”で「下咽頭がん」の早期発見が可能に 岡山大学・広島市民病院の研究グループ

岡山大学と広島市民病院の研究グループは、唾液中のDNAを解析することで、下咽頭がんが早期発見できることを明らかにしました。

3月27日、イギリスのCancer Research UKとSpringer Natureによる学術雑誌「British Journal of Cancer」オンライン版に公開されました。

岡山大学病院消化器内科の衣笠秀明助教と平井亮佑さん(岡山大学医歯薬総合研究科博士課程3年在学中)らの研究グループは、早期下咽頭がん患者の唾液を解析したところ、DCC遺伝子と呼ばれる特定の遺伝子にメチル基がつく(=メチル化する)ことが分かりました。

そもそもがんは、DNA配列の一部の塩基が変異し、そうした変異が蓄積して正常に機能しなくなって起きる病気ですが、この研究では「塩基配列の変異」ではなく特定の遺伝子の「メチル化」に注目しました。

研究グループは、まず岡山大学病院で、早期下咽頭がんの患者と下咽頭がんのない患者の唾液中のDNAを抽出して「メチル化」の頻度を比較しました。その結果、早期下咽頭がんの患者の唾液中DNAは、下咽頭がんのない患者のものに比べてDCC遺伝子のメチル化頻度が異常に高いことがわかりました。

さらに、広島市民病院でも同様の解析を行ったところ、下咽頭がんの患者の唾液中DNAに高いメチル化が検出されたことから、唾液中のDCC遺伝子の異常メチル化を調べることで下咽頭がんが早期発見できることが判明しました。

下咽頭がんは症状が出にくいため進行してから発見されることが多く、早期の簡便な診断手法がないことが課題となっていました。この研究により、予後不良とされる下咽頭がんを早期に発見し病変を切除すれば、根治を目指すことができるようになります。

研究グループは、さらに多くの遺伝子で検証を行い、最終的には診断キットの開発につなげたいと期待しています。

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