リンゴ初 AI選果/弘前・ゴールド農園 新施設に導入、稼働へ

リンゴ施設で初めて導入したAI選果機の利点を説明する石郷岡常務
完成したゴールド農園の「新りんご選果場」

 「葉とらずりんご」で知られる青森県弘前市のリンゴ移出・加工販売業ゴールド農園(石岡繁行社長)が2022年から同市悪戸に建設を進めていた新たなリンゴ選果施設が、今月完成した。同社によると、リンゴ施設としては初めて人工知能(AI)による選果機を導入。箱詰めを手伝うロボット3機のほか、厳格な検疫を伴うアジア向け輸出の拡大に向け、病害虫を除去する設備「エアーダスター」も備えた。24年度産リンゴの取り扱いから稼働する。

 AI選果機は県外のメーカーが開発し、ミカンの選果などで活用例がある。これまで職員が目視で行っていた、等級や傷、さびなどを見分ける作業が自動化される。今後1年間は職員が行った選果のデータをAIに学習させる。選果のばらつきをなくすことで、将来的にリンゴの市場価値も上がるという。

 葉とらずは、一般的なリンゴ作りで行う葉を摘み取る作業が不要なため、省力化を目指す農家の間で栽培が広がっている。ここ数年は深刻な労働力不足を背景に、葉とらずを扱う農家が増え、同社へ集荷を依頼する「生産会員」の希望が増えている。新施設の完成で処理能力が上がれば、生産会員は23年比で8人増の500人。取扱数量も約4千トン増の1万4千トンまで伸びる見込みだという。

 同社の選果部門で働く職員は3分の2が60代以上と高齢化し、将来の労働力が不足する懸念がある。同社の石郷岡浩幸常務はロボットの増強も見込んでいるとし、「将来的には外国人労働者などの補助労働力も必要になる可能性がある」と述べた。また、「県産リンゴが高く売れるうちはいいが、これから安い外国産が日本に入ってくれば消費を食われる。低コスト栽培や出荷経費の削減は農家所得の向上につながる」と強調した。

 冷蔵庫は3室で、貯蔵容量計2012.8トン(10万640箱)。総事業費は約22億円で、このうち9億6069万円は国庫補助金を活用した。

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