小川原湖シラウオ生食再開目指し産学官連携

 2022年、淡水魚などにつく寄生虫・顎口虫(がっこうちゅう)が皮膚に引き起こす「顎口虫症」の可能性のある患者が青森県内で相次いで確認されたことを受け、東北町の小川原湖漁協(濱田正隆組合長)は24年度から、産学官連携によるコンソーシアム(共同体)を立ち上げ、顎口虫感染メカニズムの解明と、瞬間的に巨大な電力を発生させる「パルスパワー」を使った顎口虫の殺虫方法の開発に取り組む。同漁協は淡水・汽水産魚の食の安全につなげ、生食シラウオの出荷再開を目指す。

 コンソーシアムは、同漁協を中心に、北里大学、熊本大学、県産業技術センター、東北町、県などが加わる。

 22年、約130人が皮膚のかゆみや腫れの症状で上十三地区などの医療機関を受診。1人の皮膚から、顎口虫が検出された。症状が出た人の多くがシラウオを生で食べていた。以来、同漁協は現在まで生食シラウオの出荷を自粛している。

 ただ、同漁協が北里大学獣医寄生虫学研究室にシラウオのサンプルを提供したところ、いまだ顎口虫は検出されていないという。

 このため、同漁協は同研究室に顎口虫の寄生状況のモニタリングや、シラウオに感染するメカニズムの解明などを依頼する。

 一方、熊本大の研究グループは瞬間的な巨大電力「パルスパワー」で、魚に潜むアニサキスを感電死させる装置を開発しており、この技術を応用した顎口虫の殺虫技術・装置の開発を行う。県産業技術センターはパルス処理したシラウオの品質、食味の評価を行う。

 町は顎口虫に対するパルス処理効果の実証に対し、24年度一般会計当初予算に200万円を盛り、事業を支援するなど協力。県も調査などを支える。

 同漁協の細井崇会計主任は「県、町、研究機関に参画してもらい、産学官一体となって、食の安全の確保実現を目指す。併せて、水質環境改善にも取り組んでおり、消費者のイメージを回復させ、生食シラウオの出荷再開による地域の食文化継承につなげられるよう、漁協としても鋭意努力する」と話した。

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