和製漢語と入社式(4月1日)

 きょう1日は「万[ばん]愚[ぐ]節[せつ]」―。耳慣れない人もいそうだが、エープリルフールのことだ。俳句の季語でもある。直訳の「四月ばか」よりは、格調の高い言い方に聞こえる。漢字が醸し出す雰囲気に、奥深さを感じる人もいるだろう▼幕末以降、日本は、西洋から押し寄せた文物や概念を漢字を使って翻訳する必要に迫られた。日本でつくられた漢語なので「和製漢語」と呼ぶ。作業は大変だった。∧ことごとく日本語に訳そうとし、また実際訳した。それに漢字が動員され、数千数万語にのぼる和製漢語がつくられた∨という(高島俊男著「漢字と日本人」)▼政治、法律、生活、哲学、通信、交通などの言葉がそれに当たる。漢字なので中国でつくられたと思いがちだが、意外にもいずれも日本製なのだ。先人の苦労が実らなかったら、さて、どんな世の中になっていただろうか。少なくとも、これらの用語はなかったことになる▼きょう、多くの企業で入社式が行われる。職種は営業、経理、総務、金融、不動産…。機械、運輸、電器もあろう。昔の人はすごかった。これらの言葉も全てが和製漢語、しかも今でも使われ続けている。決してうそではありませんので念のため。<2024.4・1>

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