「アリイ」で働く、それが私の選んだ道 自閉症の娘と母、中学の恩師らに手作りのマラサダ贈る

お世話になった先生たちに手作りのマラサダを贈った嶋尾朱織さん(右)=東中学校

 兵庫県の姫路市立東中学校を卒業し、4月から母が経営するハワイのドーナツ「マラサダ」の専門店「ali’i(アリイ)」(同市別所町別所3)で働く嶋尾朱織(あかり)さん(15)が、初めて手作りしたマラサダをお世話になった先生たちに贈った。自閉症があり、周囲に助けられながら特別支援学級で学んだ朱織さん。外はカリっと、中はふわふわのマラサダをほおばった教員らは「甘くておいしいね」とほほ笑み、朱織さんの門出を祝った。(成 将希)

 朱織さんは、2歳で自閉症の診断を受けた。「保育所の友だちと一緒に、地域コミュニティーの中で育ってほしい」との両親の願いを受け、地元の小中学校で学んだ朱織さんは「みんなとおしゃべりしたり、行事も一緒に参加したりして楽しかった」と振り返る。

 朱織さんの小学生の頃からの夢は「パフェ屋さん」。人と話すことが大好きで、接客業に憧れた。アリイはそんな娘の夢をかなえようと、両親が朱織さんの大好物だったマラサダの専門店として昨夏に開店した。

 卒業式を終えた朱織さんは、社会人になるのを前に、3年間お世話になった中学の先生に感謝の気持ちを込め、初めて手作りしたマラサダを贈ることにした。

 式から5日後、朱織さんは母みち子さん(51)とともに初めてのマラサダ作りに挑戦。「丸く、丸く」と気持ちを込めながら生地をこね、油で揚げた。50個を作り、職員室に直行した。

 「失礼します。手作りのマラサダを持ってきました」。水色の制服に身を包んだ朱織さんの声が職員室に響いた。教員らに出来たての温かいマラサダを配り、一口食べて笑顔になる恩師たちの表情を見て、緊張していた朱織さんの顔にも笑みが浮かんだ。

 朱織さんの学年を担当した上村太一さんは「朱織さんを中心に輪ができるほど、皆から慕われていた。彼女がやりたいことを存分にやってほしい」。特別支援学級の担任として3年間、朱織さんと過ごした中谷かおりさんは「誰よりも真面目で、頑張り屋さんでした。アリイで働くことは彼女自身が選んだ道。きっと大丈夫」とエールを送った。

 朱織さんは「先生たちがおいしく食べてくれてうれしい。お店で働くのが楽しみ」と声を弾ませた。

 朱織さんは1日から店頭に立つ。店舗の情報は店のインスタグラムで発信中。アリイTEL079.255.7000

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