【2024年問題 福島県内の現場から】バス事業者 運転手 工夫で守る市民の足 夜間の便数を縮小

 働き方改革関連法施行で1日からバス運転手の労働時間規制が強化され、連日勤務の場合9時間以上の休息が必要となる。県内のバス事業者は夜間の路線バス便数を縮小したり、高速バス便数を減らしたりして工夫を重ね、運転手を確保しようと努めている。

 新常磐交通(いわき市)は1日のダイヤ改正で、午後8時以降にJRいわき駅や泉駅から小名浜などに運行していた約10便を5便に縮小する。これまでは午後9時以降に業務を終えた運転手が翌朝午前6時台の始発から勤務できたが、新たな基準では勤務できなくなる。夜間の便を削減し、通勤・通学の需要が見込まれる便に運転手を充てる。

 昨年11月に示した計画で133系統のうち64系統を廃止するとしていたが、沿線の学校関係者からの要望などを受けて系統を再編した。回送車両を実車運行に変更し、学生の通学の足を維持した。結果的に削減数を57系統に抑えたが、それでも平日74便、土日祝日は139便を削減する。同社の門馬誠常務は「通勤・通学の需要が集中する平日は運転手も休めない。比較的影響の少ない土日祝日や夜間をカットせざるを得ない。便数の減少は苦渋の決断だが、生活への影響を抑え、市民に理解を求めたい」と説明する。

 運行を守るための最低限の人員は確保したが、運転手が不足する状況は変わらない。今も15人ほど足りないという。同社は運転手に必要な大型2種運転免許取得の金銭的な補助や、既に免許を所持している採用者に支度金50万円を用意するなど人員確保に力を入れる。ただ、土日祝日も長時間働く可能性がある運転手を希望する若い世代が少ない。門馬常務は「人材確保に向けた取り組みの周知など行政にも協力をお願いしたい」と要望する。

 ダイヤ改正を前に、いわき駅の路線バスターミナルでは、停留所に張られた運行時刻表に見入る利用者の姿が見られた。路線バスを待っていた同市平中平窪の会社員平子めぐみさん(32)は「毎日のように通勤で使っている。土曜日や平日夜の勤務があり、帰宅の足に影響する。働き方改革は理解できるが、これ以上の減便は避けてほしい」と求めた。

■現行路線ほぼ維持 会津乗合自動車と福島交通

 会津乗合自動車(会津若松市)は会津地方と郡山市湖南町で運行する合わせて51路線を維持する。ダイヤ改正もJR在来線の時刻に合わせたり、住民からの要望を踏まえて変更した。地元路線を維持するため、高速バスの往復便を減らすなどして人手を回すなどの対応を取った。同社は「行政には乗務員の待遇改善につながる施策を求めたい」と強調する。

 福島交通(福島市)は中通りと相馬地方で運行している路線のほぼ全てに当たる約300路線を維持する。新しい労働基準に対応するため、福島市や郡山市の一部の路線でダイヤを減らすなどの対応を取ったが、「影響は最小限に抑えられた」としている。運転手確保のため、県外も含めて募集を行うなど力を入れてきたが、不足する状況は続いており、「引き続き確保に努めていきたい」としている。

1日から系統数や便数を削減する新常磐交通の路線バス=31日午後6時ごろ、JRいわき駅

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