ファストフード店の「紙ストロー」利用者のSNS投稿が話題に… 老舗ストロー製造会社の主張「紙ストローを作るつもりはありません」プラスチック製ストローを作り続ける理由とは?

カフェでもコンビニでも…ドリンクを飲む際に今や当たり前にもなってきたのが「紙ストロー」。そんな”脱プラ”の流れが加速する中、SNSでは「紙ストロー」の意義を問いかける投稿も定期的に話題になっています。
こうした中、あるストロー製造会社は「紙ストローを作るつもりはない」と断言。プラスチック製ストローを作り続ける理由を聞きました。

SNSなどでは去年頃から、ことあるごとに話題にのぼる「問題」…それが、「紙ストロー」です。

SNSへの投稿
「紙ストロー、本当に不味い」
「紙ストロー、ふにゃふにゃで草」
「自然に優しいか知らんけど、少なくとも小さな子どもには優しくない。最後浸して吸ってるし」

鳥取県米子市内で街頭インタビューをしてみましたが、ほとんどの人はあまり歓迎していないようです。

街の人
「圧倒的にプラスチックストローが良いです」
「私も。ふやけるのが飲みにくくなるけん、嫌ですね」
「紙ストローを口につけた感じが、あんまり好きじゃないですね、私は」

「プラスチックストロー」から「紙ストロー」への転換の背景にあるのが、2022年4月に施行された「プラスチック資源循環促進法」です。
海洋プラスチックごみの問題などを受けて制定されたもので、企業に対してプラスチックの使用量の削減を求めるものです。

対象はフォーク、スプーン、そしてストローなどの12品目。大手カフェチェーンやファストフード店、コンビニなど、使用量が年間5トン以上の事業者には削減を義務化するなどし、取り組みが著しく不十分な場合には勧告・公表・命令、そして罰金50万円以下の罰金となる可能性もあります。

取り組みの背景を経済産業省の担当者に聞きました。

経済産業省資源循環経済課 担当者
「国の調査で、提供量が多いワンウェイプラスチック(一度だけ使われて廃棄されるプラスチック製品)を調べたところ、上位12品目にストローが含まれていました。これらは回収してリサイクルするスキームがなく、洗浄などをしてリサイクルするにもコストもかかり、現状多くが使い捨てとなっているので、削減していこう、という動きになったわけです」

そんな中、岡山県の老舗ストローメーカーは、思い切った方針を打ち出しています。

シバセ工業 磯田拓也 代表取締役
「私どもはプラスチックのストローしか作りませんという形でやっておりますので紙ストローは一切やっておりません。
元々ごみ問題ですから。だから”脱プラ”というのがよく分からないと感じています」

こう話すのは、岡山県でストロー製造を手掛けるシバセ工業の代表・磯田拓也さんです。

この会社は、1969年からプラスチック製のストローの生産を行っていますが、”脱プラ”の問題はそもそも、プラスチックごみの投棄が起因しているとしたうえで、紙ストローを作らない選択をしたのには、理由があると言います。

シバセ工業 磯田拓也 代表取締役
「紙ストローが環境にいいことは1つもないんです。強度を出すためには厚く巻いていかないといけないんですが、そうするとプラスチックに比べて重くなってしまう。材料が重くなるってことはそれだけ素材を使っていることになるので省資源にもならないし、車で運ぶとなると、重たいものは燃費も悪くなりCO2も多くなってくると」

また、食材も付着しているためリサイクルができるわけでもなく、味も落ち、1本あたりの単価も高くなってしまう…。これらの理由から紙ストローの製造には着手しない方針を貫いているそうです。

実際、街では、どれくらいのカフェで紙ストローが導入されているのでしょうか。

鳥取県米子市と島根県松江市の「プラスチック資源循環促進法」の対象には入らない、大手チェーン以外のカフェ・喫茶店10店に取材したところ、9店で「未導入」。1店で「紙ストローを要望された時に提供できるよう準備している」という回答でした。

米子市内のカフェ担当者
「ご年配のお客様が多いのですが、おととし試験的に紙ストローを導入したら、お客様から『ふにゃふにゃして紙を食べているみたい』と不評で、2週間経たずに、すぐプラスチックストローに戻しました」

松江市内のカフェ担当者
「紙ストローは炭酸がよくしみ込んで使い辛いです。また、ステンレス製のものも試してみましたが単価も高くて洗い辛く、結局プラスチックストローを使っています」

ついつい紙ストローの使いづらさに焦点が当たりますが、実は、前提として「紙ストローでなければならない」ということではないと、経済産業省の担当者は話します。

経済産業省資源循環経済課 担当者
「紙ストローの導入に切り替えていただいた事業者は、しっかりと取り組みを理解していただいているということで感謝しています。
ただ、プラスチックストローの削減はお願いしていますが、紙ストローを使用して下さい、ということではありません。
多くの事業者はコストの面で紙ストローを選ぶ傾向にありますが、木製など別の素材のストローを選ぶという選択肢もあります」

一方で、そもそも紙ストローの強度を高め、味を損ねることがないようにできないのかという素朴な疑問もあります。

アイスドリンクの使い捨てカップに使われているような、水分に強い紙をストローに使ったりすることはできないのでしょうか。

シバセ工業 磯田拓也 代表取締役
「紙の中に水が浸透しないように表面をコーティングしたら良いんじゃないかと思われるかもしれないが、コーティングってプラスチックなんですよ。ポリマーですから。
ですから、プラスチックやめようと言っているのにプラスチックを使ったら意味がないんじゃないかと」

ちなみにシバセ工業は、コロナ禍ではPCR検査に用いられる医療用のストローが大ヒット。
今後は飲料用のみならず、こうした工業用のストローの開発にも注力しながら、国産ストローならではの多品種・小ロット・短納期を武器に、輸入ストローなどに対抗していきたいとしています。

シバセ工業 磯田拓也 代表取締役
「今後はバイオマスというのを今やろうとしているので、そういったもので環境対策品として出そうとしています。紙ストローを作るつもりはありません」

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