次代へのみやげ(4月2日)

 二本松市の県立霞ケ城公園で2500本の桜が開花を待つ。白亜の箕輪門との対比とともに、近年は城山の北側斜面の光景も写真愛好家らを引きつける。市が植栽した木々が年々育つ。満開の時期は薄紅のかすみが山を包み、本丸の石垣が天空に浮かぶように見える▼「孫へのみやげ」と書かれた看板が山頂に向かう道の傍らに立っている。辺りの桜は老人クラブの人たちが孫へのみやげにと昭和55年から植え、丹精込めて手入れしていると紹介する。歳月を経て文字は薄れ、いわれを知る市民は少なくなった。それでも、思いを宿す桜は他の木々と一体になって毎春、柔らかな彩りを添える▼「自分も全く同じ気持ち」。城山の西隣にある寺の住職は語る。これまであまり手の入っていなかった裏山を整地し、昨年12月に300本の桜を植えた。安達太良、吾妻の峰々を望み、のどかな棚田や河津桜、菜の花の園地を見下ろせる眺めのよい場所だ▼福島市の花見山のような愛される山に―との願いを込めて「龍泉寺華山」と名付けた。散策道は地元の住民が力を合わせて整え、若木が花を咲かせる日をみんなで楽しみにする。次代へのみやげは孫の背丈を越え、すくすく育つ。<2024.4・2>

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