天然記念物のカンムリウミスズメ 長崎・母子島に繁殖地 長崎大の研究グループが発見

卵を温めるカンムリウミスズメの親鳥=昨年4月3日、長崎市母子島(山口教授提供)

 長崎大大学院総合生産科学研究科の山口典之教授(鳥類生態学)らの研究グループは1日、国の天然記念物に指定されている海鳥カンムリウミスズメの繁殖地を長崎市外海地区沖の母子島(ははこじま)で発見したと発表した。山口教授によると、県内での繁殖地発見は五島市男女群島に続き2カ所目。
 研究グループによると、カンムリウミスズメは日本近海だけに生息する希少種で、推定個体数は5千~1万羽。環境省のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類に分類される。生活のほとんどを外洋で過ごし、繁殖地は無人島や岩礁で期間も限られるため、特定は非常に難しいという。約5年前から地元住民らから複数の目撃情報が寄せられ、昨年4月に上陸調査をした結果、繁殖地であることを確認した。

海面すれすれを飛ぶカンムリウミスズメ=2020年2月3日、佐世保市の九十九島

 繁殖地はこれまで41カ所が報告されているが、油汚染や混獲に加え、カラスなどが侵入して深刻な捕食被害をもたらす事例が複数報告されており、残るのは25カ所程度とみられる。母子島でもカラスによる被害が確認されたという。
 山口教授は「種を守るには個体数の増減把握や、捕食被害を防ぐことが重要。そのためには繁殖地を把握する必要がある。今回の発見が行政による保護区指定など希少生物の保護につながれば」と意義を語った。
 北九州市立自然史・歴史博物館の中原亨学芸員らとの共同研究。引き続き母子島の個体数などの調査を続ける。

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