超大型契約獲得の山本は新人王獲得、松井は15セーブ以上に期待!侍メジャーリーガーたちの「2024年のノルマ」【後編】<SLUGGER>

今季も数多くの侍メジャーリーガーが世界最高の舞台で戦う。チームにおける立場や期待度もそれぞれ違う中、一人一人の「2024年のノルマ」を選定した。

▼山本由伸(ドジャース)
「新人王獲得で投手陣の柱に」

投手史上最長&最高額の契約(12年3億2500万ドル)を獲得したのだから、新人王獲得に値する成績が最低ラインと言える。実際にMLB公式ではナ・リーグの受賞者本命に挙げられ、2年前まで同じ環境でプレーしていた千賀滉大(メッツ)が昨季記録した防御率2点台に届けば、サイ・ヤング賞投票でも上位に食い込めるはず。三振をそれほど量産するタイプでは決してなく、成績予測システムでは防御率は3点台後半に達するとの見方が多いが、それを覆す活躍を期待したい。

▼吉田正尚(レッドソックス)
「20本塁打&OPS.850クリア」

メジャー1年目はリーグ7位の打率.289を記録した一方で本塁打は15本にとどまり、OPSも.783。走塁・守備の貢献が限定され、DH起用がメインになる今季は、バットでの存在感を高める必要がある。昨季のゴロ率55.0%はMLB平均を10%以上も上回るなど、打球全体が思うように上がらない傾向が目についた。それでも、前半戦だけで10本塁打を放つなどパワーは十分あるはず。打球角度を強く意識して臨む今季は20本塁打&OPS.850をクリアして、打線の中軸として得点増に貢献したい。

▼千賀滉大(メッツ)
「2年続けて防御率2点台キープ」

念願叶って海を渡った昨季は“ゴーストフォーク”を武器に防御率リーグ2位の2.98、新人王投票でも2位と見事な成績を残した。今季は開幕投手も有力視されていたが、右肩を痛めて実戦復帰は5月以降の見込みで、2年連続の規定投球回到達は厳しい情勢。それだけに、投球内容のクオリティは落としたくない。メジャー1年目から2年続けて防御率2点台を記録した日本人先発投手はこれまで皆無。相手球団もアジャストしてくる中で、ハイクオリティな投球を維持できるか注目したい。
▼今永昇太(カブス)
「ローテを守り150イニング&防御率3点台」

メジャーでもトップクラスの回転数を計測するボールを武器に、昨春のWBCで実力は証明済み。日本での継続的な安定感が評価され、山本よりも優れた防御率を残すとの見方も少なくない。オープン戦では三振の山を築く一方で本塁打を浴びる場面も目立ったが、4月1日のメジャーデビュー登板ではいきなり6回2安打無失点、9奪三振と上々の滑り出し。シカゴのファンから喝采を浴びた。シーズンを通してローテーションを守り、防御率3点台にまとめれば、まずは及第点の1年目と言えるのではないか。

▼松井裕樹(パドレス)
「クローザーに昇格して15セーブ」

オープン戦での3登板で3.0回を無失点、8奪三振。開幕後も4登板連続でゼロに抑えるなど好スタートを切った。伝家の宝刀スプリッターに加えてスイーパー(スライダー)でもメジャーの強打者たちを翻弄。メジャー公式球やピッチクロックへの対応も今のところはまずまず順調のようで、このまま信頼度が高まれば抑え抜擢も十分あり得る。ロベルト・スアレスとの「NPB出身リリーバーコンビ」がサンディエゴの新たな名物になるかも?

▼藤浪晋太郎(メッツ)
「50登板&勝利の方程式入り」

新天地メッツのブルペンでは、戦列復帰の絶対守護神エドウィン・ディアズを筆頭に、実績十分な多士済々の面子が揃う。その中で序列を上げ、勝利パターンの一角を担うには何より投球の安定感を増すことが絶対条件。オープン戦では昨季前半戦の制球難がまた顔を出し、シーズン開幕は3Aで迎えることになったが、好調時の投球はメジャーの強打者たちにも十分通用する。まずはマイナーで調子を取り戻し、再昇格の声を待ちたい。

文●藤原彬

著者プロフィール
ふじわら・あきら/1984年生まれ。『SLUGGER』編集部に2014年から3年在籍し、現在はユーティリティとして編集・執筆・校正に携わる。X(旧ツイッター)IDは@Struggler_AKIRA。

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