熟睡するなら、就寝何時間前までに夕食を済ませる?小林弘幸先生がアドバイス

「長い時間眠れない」「早く目が覚めてしまう」など、睡眠の悩みを抱えていませんか。短時間でもぐっすり眠れて、翌日すっきり起きられる快眠テクニックを、自律神経研究の第一人者 小林弘幸先生に5回に分けて教えていただきます。まずは、「熟睡スイッチ」をオンにする毎日の習慣についてです。

最初のノンレム睡眠時に深い眠りにつくことが大切

眠りには脳も体も眠っている「ノンレム睡眠」と、脳は起きているが体は眠っている状態の「レム睡眠」があります。寝入りのタイミングで訪れるのがノンレム睡眠で、90分サイクルの最初にいかに深く眠れるかで、その夜の睡眠の質が決まります。

短時間でも疲れがとれる睡眠のためには、寝入りの90分でぐっすり深い眠りにつくことがポイント。すると、たとえ短い睡眠時間であっても睡眠全体の質は向上し、翌朝のスッキリとした目覚めや睡眠休養感のアップにつながります。

日中、心身のパフォーマンスを最大限に発揮するためにも、寝入り始めの90分、ノンレム睡眠の質を高めることを意識しましょう。

健康な人の場合、およそ90分前後の周期でノンレム睡眠とレム睡眠を数回繰り返し、朝を迎えます。最初のノンレム睡眠が最も深く、明け方に近づくと浅く短くなるため、寝入りに深く眠ることが重要。

短時間でもぐっすり熟睡できる 5つの就寝前ルーティン

寝入りの90分の質を高めて、短時間でも熟睡できる体をつくるためには、就寝前の生活習慣を見直してみましょう。

【就寝前ルーティン①】就寝3時間前までに夕食を済ませる

睡眠の質に大きく影響する要因の1つが、夕食をとる時間。食事のあと、胃腸でしっかり消化吸収するまでにかかる約3時間は「胃腸のゴールデンタイム」です。

このゴールデンタイムをとるかとらないかで、睡眠の質は大きく変わります。できるだけ早めに、少なくとも就寝3時間前までには済ませることが大切。もし、就寝3時間前以降に食事をするときは、できるだけ消化にいい、軽いものを選びましょう。

point
●腹6~8分目をメドに好きなものをよくかんで食べる
●就寝3時間前以降に夕食をとるときは腹4~5分目をメドに
●食事量の配分の理想は「朝4:昼2:夜4」

【就寝前ルーティン②】39〜40℃のぬるめのお湯で15分前後の半身浴をする

人は、高くなった深部体温がすっと下がるとき眠りにつきます。入浴後、深部体温が高いままの状態で寝ると、寝入りの90分が深い眠りになりません。就寝1時間前に下記の手順で入浴を済ませると、副交感神経が優位になって血流が促進され、深部体温をスムーズに下げます。入浴直後に寝たい場合にはシャワーだけ、または足湯にして、深部体温を上げない工夫を。

【熟睡スイッチをオンにする入浴法】
①心臓に遠いところ(手足など)からかけ湯をする
②39~40℃のお湯に2~3分、首までつかる
③みぞおちまでの半身浴で、5~10分程度つかる(それ以上の長風呂はしない)
④少なくとも就寝1時間前までに入浴を済ませる
⑤入浴後、1杯の水を飲む

point
●寒い時季だけなく、夏も湯船につかる
●入浴後に1杯の水を飲むと脱水症状を防ぎ、自律神経も整う

【就寝前ルーティン③】短い日記をつけて、ストレスの原因を書き出す

ストレスは熟睡を妨げる大きな要因に。心配事などがあると、たとえ眠れたとしても頭は興奮状態で、深いノンレム睡眠になかなか入れません。日々のストレスを寝る前に小さく軽くする方法として、最も効果的なのは「書き出す」こと。一日の終わりに短い3行程度の日記をつけることを習慣にしましょう。悩みの原因を明らかにするだけでもストレスはかなり解消されます。

point
●1行目は自分がストレスに感じたことを短く書く
●次に自分が一番感謝したことを1~2行で書き出す

【就寝前ルーティン④】明日の洋服や持ち物の準備をする

翌日の準備をせずに就寝すると、無意識のうちにその不安を睡眠時まで引きずってしまいます。眠る前に、明日着る服、靴、持ち物や天気の確認などを済ませておきましょう。翌朝の不安が解消し、心身をリラックスさせる副交感神経が働き、安らかに眠れます。起床後の心の余裕にもつながり、前向きな気分で一日をスタートできるでしょう。

point
●睡眠時間が短いときこそ効果的
●翌日の天気のチェックもしておけば万全

【就寝前ルーティン⑤】鼻から3秒吸い、口から6秒吐く「ゆっくり呼吸法」

吐く息を長くすることで副交感神経の働きを高め、熟睡スイッチをオンにする「ゆっくり呼吸法」。あお向けになり、両手は下腹部に添え、目を閉じて全身の力を抜きリラックスします。吐く息を意識しながら鼻から3秒吸い、口から6秒吐いて、ゆっくり呼吸して。横隔膜を広げるように息を吸うと酸素を多くとり入れる深い呼吸になり、さらに熟睡モードに!

吸う息と吐く息が「1:2」の割合になるように意識して、みぞおちに指を当てて鼻からゆっくり息を吸います。次に、みぞおちをへこませながら、口からゆっくりと息を吐きましょう。

point
●呼吸は無理をせず、ゆっくり長く吐く
●吸うときは横隔膜を広げる意識で

※この記事は「健康」2024年春号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のため再編集しています。

監修者
順天堂大学医学部教授 小林弘幸

日本スポーツ協会公認スポーツドクター。 1987年、順天堂大学医学部卒業。92年、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属医学研究センター、 アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学小児外科講師・助教授を歴任。『自律神経の名医が考案した ぜったい幸せになる話し方・伝え方』(主婦の友社)など著書が多数ある自律神経研究の第一人者。


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