後継ぎがいなくて廃業となる前に…地方の経済を守れ 銀行などが社長たちの事業承継を手厚くサポート

日本政策金融公庫などが開いた事業承継支援のイベント=2月、鹿児島市

 鹿児島県内の関係機関で事業承継支援が進んでいる。経営者の高齢化や経営環境の悪化を背景に事業継続を断念するケースがあり、廃業増加による地域経済の縮小を防ぐ狙いがある。

 2月中旬、日本政策金融公庫などは鹿児島市で事業承継のイベントを開いた。事業譲渡したい経営者が業務内容を紹介し、引き継ぎ先を募る。県内でダイビングスクールを営む男性は「70歳を過ぎたので3~5年で私の知識を引き継いでいければ」と、オンラインで参加した承継希望者に思いを伝えた。

 出席した経営者は「店舗と駐車場が広く、経営次第でどんどん伸びる」「機械好きの方にはたまらない工具を多くそろえている」と不動産や所有資産もPR。参加者からは売り上げや1日の仕事の流れを尋ねる質問があった。

 取引先の中から買い手と売り手を見つけてつなげる仲介サービスに力を入れる鹿児島銀行は2023年、県内の税理士法人と承継支援の連携協定を結んだ。今後の資金繰りなどへの影響を懸念し「メインバンクに相談してもいいものか」と悩み、顧問税理士らに伝える事業主もいるといい、より広く譲渡希望の情報を集める狙いだ。

 同行は法人営業を中心に合併・買収(M&A)の基礎や企業価値の算出法について研修を実施、人材育成に注力する。担当者は「事業をたたみ雇用機会が失われれば経済の縮小につながる」と意義を話す。

 東京商工リサーチによると、23年に県内で休廃業・解散した企業は前年比47件増の516件だった。経営者の高齢化や後継者不在で事業継続を断念する場合が増えているという。

 親族間や第三者継承をサポートする県事業承継・引継ぎ支援センターは、税の手続きのほか、株や資産の相続、関係者への周知といったスケジュールとなる「事業承継計画書」の策定も支援する。相談件数は年々増加傾向にあり、24年度の相談件数は前年度比14.4%増となった。

 満澤美智雄統括責任者は「引き継ぎには最低でも3年かかり、10年要する場合もある。健康面で明日何が起こるかも分からない。先延ばしせず、早めに取り組むことが肝心」と話した。

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