ケニアでボランティア参加 活水高の竹内さん スラムの子どもを支援 「いつか自ら基盤を」 長崎

伶さん(左から2人目)らプロジェクトメンバーから机を贈られ、喜ぶ子どもたち=ケニア、サウスランドスラム(伶さん提供)

 学習環境が整っていないケニアのスラムの子どもたちを支援しようと、活水高1年の竹内伶さん(16)は昨年夏の1カ月間、現地に滞在した。国の留学制度を活用し、民間団体のボランティア事業に参加。子どもたちに机と照明器具を贈った。自ら支援策を考え、異国での触れ合いを通じて学んだのは「現地に行かないと分からないことばかり」だった。
 伶さんが訪れたサウスランドスラムには約6千人が暮らしていた。ごみが山積みされ、トイレの悪臭が鼻を突く。停電が多く、インターネットの接続も不安定。放課後、子どもたちは屋外で給水用ポリタンクに座り、膝の上にノートや教科書を広げていた。「自分がどれだけ恵まれているかを痛感した。貧困から救い出したいと思った」
 ケニアに行くきっかけは中学3年の頃。英語科進学を希望するも成績が伸びず、教員から「外国人の友達をつくった方が良い」とアドバイスされた。母夕雨子(ゆうこ)さんと一緒に手だてを探し、募金を原資にケニアの子どもに診療や治療を無料で施すNPO法人「チャイルドドクタージャパン」の存在を知った。
 支援者のいる日本と現地を映像でつなぎ、交流する「オンライン子ども食堂」も定期開催。伶さんは画面越しにスラムの状況を学ぶうちに「現地を訪れ、会いたい」という思いが強くなった。
 夕雨子さんは治安への不安もあり反対したが、諦めきれない娘の様子に「そこまで強い意志があるなら」。偶然ニュースで見た文部科学省の海外留学支援事業「トビタテ!留学JAPAN」を紹介した。
 事前審査に必要な探究活動計画を練る中で、伶さんが目を付けたのは現地の学習環境。狭い部屋でもベッドの上で勉強ができるように、折り畳み机と照明器具を法人寄付金で贈ることを提案した。

屋外で膝の上に教材を広げる子ども(伶さん提供)

 自身は被爆三世で、高校生一万人署名活動実行委にも所属している。ケニアでは長崎の原爆の歴史や「核兵器」という言葉も知られていない。平和な世界を希求するには「まず知る機会を与えるのが大事なんじゃないか」。原爆の絵本を英語で読み聞かせることも計画に盛り込み、審査に合格し留学を果たした。
 現地では、オンライン子ども食堂の運営に携わり、親とも交流。ただ、英語の方言が聞き取れず難儀した。街中でスマートフォンを使えば盗まれかねず、翻訳機能を使えなかったが、少しずつ会話できるようになった。歩いていると子どもが集まり、手をつないできた。人々の温かさに触れ、「居心地が良かった」と振り返る。
 新品の机や照明を受け取って喜ぶ親子の様子は、日本の高校生や支援者にもリアルタイム映像で報告。挑戦した絵本の読み聞かせは「正直難しくて、あんまり伝わってなかった」と次への課題とした。
 今回は支援態勢が一定整ったスラムで活動できたが、いつかは「何もない状況で自ら基盤を作ることから始めてみたい」という。机と照明の提供プロジェクトには、今も団体の一員として携わり続けている。スラムで出会った子どもたちの笑顔が伶さんの未来を照らしている。

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