避難生活乗り越えて春 先天性難聴の大岩さん 門前高から金大に

金大に進学し夢を膨らませる大岩さん(中央)=4日午前11時35分、金沢歌劇座

  ●「障害ある子の支えに」特別支援教育の道へ 

 先天性難聴のある大岩紅葉(もみじ)さん(18)=輪島市気勝平町=が門前高から金大学校教育学類に進学した。能登半島地震で被災し、親戚宅で避難生活を送りながら合格をつかみ取った。障害がある人の支えになりたいと特別支援教育を志す大岩さんは4日、入学式に臨み、「障害があるから同じ目線で考えられる。子どもの気持ちをほぐすことができる大人になりたい」と意欲を示した。

 大岩さんは生まれつき両耳が聞こえず、2歳の時に左耳に人工内耳を入れる手術を受けた。日常会話はできるが、騒がしい場所では相手の声が埋もれて聞こえづらく、3人以上での会話は今でも難しい。

  ●地域活動にも力

 大屋小、輪島中と地元の学校を卒業し、同級生の多くが輪島高に進む中、新しい環境でチャレンジしたいと門前高に入学。高校では輪島市門前町の總持寺通り商店街と町のキャラクターをデザインしたオリジナル商品を考案するなど地域活動にも力を入れてきた。

 学校では親身に話を聞いてくれた教員に出会い、「私もこんな大人になりたい」と教育に関心を持つようになり、カリキュラムが充実し、憧れだったという金大進学を第1志望に受験勉強に励んできた。入試では大学入学共通テストとレポート、面接で合否が決まる「KUGS(金大グローバルスタンダード)特別入試」を受験した。

  ●親戚宅に身を寄せ

 共通テストを控えた今年の正月、自宅で過ごしていた時に地震が起きた。強い揺れでパニックになったためか、地震直後の記憶は曖昧だ。発生後すぐに中学生の妹と白山市のいとこ宅に避難し、避難先で勉強を続けた。

 特別入試の面接では自身の障害や特別支援教育への思いを語った。レポートは地域活動に取り組んだことを盛り込んで担任の田嶋将教諭らの協力で仕上げ、2月に合格通知を受け取った。

 金大では手話サークルに入って技術を磨き、将来は特別支援学校の教員や児童館、学童保育で働けるように必要な資格を取得したいという大岩さんは「授業についていけるか不安もあるが、いろんなことに挑戦したい」と笑顔で話した。

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