支援の共同醸造開始 福光屋×鶴野酒造店(能登町) 倒壊建物から「救出」酒米使い

酒造りを進める鶴野晋太郎さん(右)と薫子さん=金沢市の福光屋

 能登半島地震で酒蔵などが全壊した鶴野酒造店(能登町)と、福光屋(金沢市)による共同醸造が4日、金沢市内で本格的に始まった。倒壊建物から無事見つかった酒米を使い、福光屋の支援で酒造りを進める。14代目蔵元の鶴野晋太郎さん(34)と妹で杜氏(とうじ)の鶴野薫子(ゆきこ)さん(32)が酵母を培養する「酒母(しゅぼ)」の仕込みに取り組んだ。

 この日は、福光屋で使っている仕込み水を入れたタンクに、晋太郎さんや蔵人が麹や蒸したコメ、酵母を入れ、薫子さんがかき混ぜた。2種類の酒を醸造する予定で、一つは鶴野酒造店が使っていた酵母で、同社の銘柄「谷泉」の味わいとする予定。もう一つは両社がそれぞれ使っている酵母を入れ、珍しいコラボレーションの酒に仕上げる。

 晋太郎さんは「地震直後は酒造りをもうやめようと思った」と吐露。しかし、地元や全国のファンからエールを受けて奮起した。晋太郎さんは「酒造りできることが本当にありがたい。長い年月がかかるが、能登町で再建したい思いは強い」と話した。

 石川県内で唯一の女性杜氏でもある薫子さんは「飲んでくださる方々のために、おいしいお酒を早く届けたい」と意欲を語った。仕込んだ酒は5月中旬に絞る計画となっている。

© 株式会社北國新聞社