伝統工芸をミラノに出展 デザインウィークに菅笠、おりん、絹織物 県内3職人、心地よさの空間制作

ミラノでの展示に期待を高めるメンバー=高岡市勝木原

 富山県内の伝統工芸である、菅笠(すげがさ)、おりん、絹織物の職人3人が手を組み、16~21日にイタリア・ミラノで開かれる世界最大規模のデザイン展「ミラノデザインウィーク」に出展する。三つの工芸品の特長を生かして心地よさを追求する空間を会場につくり、富山が誇る伝統の手業を世界にアピールする。

  ●トヨタ紡織と共同で

 3人は、煌雲本菅笠工房(高岡市)の中山煌雲さん(48)、シマタニ昇龍工房(同市)4代目の島谷好徳さん(51)、松井機業(南砺市)の松井紀子さん(39)で、それぞれスゲ作品、おりん、絹織物を制作した。デザインユニットの今人(いまじん)(東京)の青山尚史代表(44)をクリエーティブディレクターに迎え、三つの工芸品を組み合わせた空間を生み出す。

 ミラノデザインウィークに毎年出展する自動車部品大手のトヨタ紡織(愛知県刈谷市)との共同制作となる。同社の安田仁司デザイン部長(52)が、青山代表を通じて中山さんらと出会い、3人のものづくりにかける熱意に感銘を受けて出展が決まった。

 安田部長は「何百年も感動を与える伝統工芸には数値化できない心地よさがある」とし、視覚や触覚など五感で、その心地よさを体感できる空間作品を手掛けることにした。

 メインの展示は、不均一な絹糸で織った「しけ絹」で空間を仕切り、中にスゲ製の座布団とおりんを配置する。おりんの音響で、光の演出が展開される。絹をかき分けて入る空間や、おりんの振動による揺らぎを視覚化する仕掛け、菅笠をつるしたスペースなど、それぞれの伝統工芸を体感できるエリアも設けた。

 メンバーは11日に日本を発ち、現地で展示の最終調整を行う。3日、高岡市勝(の)木原(でわら)の煌雲本菅笠工房に関係者が集まり、イメージの再確認とともに作品の完成に期待を寄せた。青山代表は「職人に光が当たる場所ができたことが意義深い」と感慨を込めた。

 中山さんは好奇心をかき立てられたとし「制作中はとにかくモノを作りたくてしょうがない感覚になった」と話した。おりんの音を視覚で表現するという初の試みに挑む島谷さんは「どんなふうに完成するのか、現地に行くのが楽しみ」と語った。松井さんは、展示する絹の中には水害で商品価値が失われたものもあるとし「蚕の命を大切にする思いに共感してもらえればありがたい」と喜んだ。

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